君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 「いいの、知ってるから」
 
 「え?」
 
 「たまたま、業界の説明会でお会いしたから。驚いたわ。皐月がはぐらかしたのも納得した」
 
 「そうか、そうだったのね。ごめんね。話聞いてあげられなくて」
 
 「ううん。匠さんとお付き合いすることになったの」
 
 「……本当に?え?匠さんから言われたんだよね?」
 
 「そう。でも、障害が多いから本当は皐月や直也さんにも黙っていろと言われたんだ。直也さんには黙っていてくれる?どうせ、いずれどこかから耳に入るかも知れないし。幼馴染みみたいね、直也さんと」
 
 「匠さんと直也さんは親も知り合いの小さい頃からの付き合いらしいんだけど、親の仕事も絡んでるから普通の友人関係とはいえないでしょうね。特に、堂本コーポレーションの傘下にある蓮見商事の御曹司であれば、匠さんには頭が上がらないのよ、結局」
 
 「……そうね。直也さんも男だから複雑なのかもしれない。匠さんの上に立ちたいという気持ちはあるでしょうから」

 皐月には言っておいた方がいいと思って続けた。
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