君がたとえあいつの秘書でも離さない
「……ありがとうございます」
私の顔をじっと見つめている。
「あの?」
「いや、友人が無理矢理お誘いしてすみませんでした。少しだけ付き合ってやって下さい。目的はどうやら貴女のご友人のようですから。私達は少し同席すれば大丈夫でしょう」
摩天楼のきらめく最上階のエデン。名前の通り、夜はキラキラしてまるで天国みたいだ。
着飾ったカップルが窓際に座っている。
肩を抱いている男性。腰に手を回している男性。
あっちなんて……顔を寄せ合っている。
今日はクリスマスイブ。
男性連れでないと入る勇気はなかったけど、形ばかりは整った私達。
ボーイに案内されて四人で座れる席に腰を下ろす。
座って始めて、お互いの顔を見る。
直也さんは、私の方をちらっと見た。
そして、皐月へと視線は戻る。
わかりやすい人だな。まあ、いいけど。
匠さんは、携帯を見てる。
どうでもいいのね、この席。
皐月は……うん?私を見てる?
「今夜はクリスマスイブですし、楽しく飲みましょう。ただし、仕事の話はなしってことでいかがですか?」
皐月が直也さんと巧さんを交互に見ながら言う。