君がたとえあいつの秘書でも離さない
「何か誤解されているようですが、ご心配のようなことはありません。それにプライベートについては、いくら上司でも従えません」
ハッキリと目を見て言う。
「古川さん。来週ゆっくり話し合おう。じゃ、今日はこれで引き下がるとしようかな」
そう言うと、背中を向けていなくなった。
「古川さん。ではこちらへどうぞ」
柿崎さんについて、堂本コーポレーションのビルへ入る。
エレベーターに乗せられた。
「上の窓から古川さんが見えたんです。でも、上司と部下にしては様子が変で、腕を取られて後ずさっているのを見て、すぐに匠様にお伝えしてお迎えに来たのです。大丈夫でしたか?」
「ありがとうございました、助かりました。驚いてしまって。あんな姿見たことなかったので」
「……そうですか。恐らく、古川さんには隠していることが多そうですね。私が知る限り、少なくともあれが石井取締役の本来の姿です。詳しくは匠様にお聞き下さい」
エレベーターを降りると、素晴らしい赤い絨毯が続いている。
ウチの役員フロアよりも荘厳な感じ。
柿崎さんに連れられて、一番手前の応接室のひとつに入る。
ブラインドを下ろして外から見えないようにする。