君がたとえあいつの秘書でも離さない
「もうそろそろ匠様のお客様もお帰りと思います。今日はそれで上がられますので、少しだけお待ちください」
そう言うと、柿崎さんは出て行った。
十五分後、ノックの音がして、匠さんが入ってきた。
すぐに、私の所へ来ると、大丈夫だったか?と顔をのぞき込む。
「はい。助けて頂きありがとうございました」
「弘君は油断ならないと言っただろ。どうしてあそこにいたんだ。もしかすると君をつけているんじゃないか?」
「……匠さん。この間の業界説明会、どうして取締役が出席することになったのか調べたそうです。そして、ここに行き着いたと言ってました。自分ではなく、私がターゲットだろうと。びっくりしました。そんなこと考える人だったなんて」
驚いた表情をして、固まっている。
「……そうか。こちらも弘君を監視する必要がありそうだな。特に君は危ないかもしれない。ストーカーまがいのことをされる可能性もある。それでなくても、普段は上司と部下で二人っきりになる時間が多い。危険すぎる」
恐ろしくなって、手を握り合わせ青くなって立っていると、そうっと私を包み込む優しい腕。
「大丈夫だ。君と付き合うと決めたんだ。何が何でも君を守るから。持っているモノを全て使うよ」
「やめてください。匠さんのお仕事の邪魔にはなりたくないです。私のために会社の何かを使うとか絶対やめてください」