君がたとえあいつの秘書でも離さない
「もちろん、いいんじゃないでしょうかね。なあ、匠」
「……そうしてもらえるとかえって助かる。その提案でここに居やすくなった」
「……遙?」
「うん。……私も構いません。それで」
お酒をオーダーし、適当なつまみをいくつかお任せでお願いする。
直也さんという人は、こういう場に慣れているのだとよく分かった。
「名前で呼んでもいいですか?それとも、名字を聞いた方がいいかな?」
「いいえ、名前はこの段階で聞こえているからそれでいいんじゃないでしょうか」
直也さんと皐月のふたりがどんどん話を進めていく。
巧さんと私はだんまり。私は、化粧室へ中座した。
すると、ホテルの化粧室を出たところで、男性から声をかけられた。
独りではないと言ったが、お酒が入っているのか、聞こえていない。
アップにした首筋に息がかかって、気持ち悪い。
逃げようとしたら、またジュータンにひっかかり、腕を引かれてその人の胸の中へ。
びっくりして、胸を押そうとしたら、横から腕を引っ張られた。