君がたとえあいつの秘書でも離さない
幸せと恐れ
朝。
ベッドルームの明かりに目を開けると、隣に彼の姿はなかった。
部屋を開けると、ラフなTシャツにパンツ姿の彼が、朝ご飯を作っている。
「おはよう。良かったらシャワー使って。この扉を出て、突き当たりだ。タオルも棚にあるの使ってくれていいから。その間に朝ご飯作っておくよ」
水の入ったペットボトルを手渡してくれる。
「ありがとうございます。お言葉に甘えてお借りしますね」
「遙。その敬語やめろよ」
「はい……えっと。……徐々に」
鞄を持つと部屋を出た。
シャワーを借りて、部屋へ戻るとコーヒーのいい香りがする。
パンとコーヒー、それにハムエッグ。ミニトマトにレタス。フライパンが置いてある。
「お腹すいた?」
「もしかして全部作ってくれたんですか?」
ははっと笑ってこちらを見る。
「作るって言ってもこの程度だけどね。良かったらどうぞ」
「……美味しそう。いただきます」
そう言って、ダイニングテーブルに向かい合って座ると、深煎りのコーヒーのいい香りがする。
「このコーヒーいい香りですね」
「味もいいんだ。飲んでみて。気に入ったら豆あげるよ」
「……うん。美味しい。こくと甘さが共存してますね。苦みが少ない」