君がたとえあいつの秘書でも離さない

 主旋律のメロディーの一回目を私が弾き終わると、二回目の主旋律が出てきたところから彼が一緒に弾いてくれる。
 途中から彼が自分で編曲して私と一緒に合奏していく。
 
 朝の光とバイオリンを弾く彼。まるで夢みたいな光景。
 最後まで弾き終わると、彼はバイオリンを下ろしてブラボーと言う。

 「遙、ピアノかなりやっていたんじゃないか?」
 
 「それを言うなら匠さんだって。どこが、のこぎり?もう、嫌だ、こんなに弾けるなんて。私恥ずかしい」
 
 「いや、とても良かった。弾いていてこんなに気持ちいいのは久しぶりだ。癒やされたよ。また、一緒に弾いてくれ。デトックス効果がありそうだ」
 
 「こんな程度で良ければ。今度はバイオリンの曲をやりましょう。伴奏練習しますから」
 
 「それは楽しみだ。そこの楽譜入れにもいくつかある。気に入ったのがあれば練習して。僕も練習しないとな」
 
 「ここは、夜弾いても大丈夫ですか?」
 
 「ああ。最上階だし、隣もいないし。母もピアノを弾く。来るとよく弾いている。家にもあるんだが、俺と合奏したがってたまに来るんだ」
 
 「素敵な親子ですね」
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