君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 週が明けて月曜日。
 すっかり忘れていたが、取締役のことがあった。

 朝、いつも通りに取締役の部屋へコーヒーを持って行く。
 
 「ああ、おはよう」
 
 顔も上げずに、パソコンを見ている。
 
 「おはようございます。本日の予定を確認させて頂きます」
 
 私が読み上げ、質問することに顔も見ないで答える。
 
 「では、失礼します」
 
 そう言って、後ろを向いた。
 すると、突然……。

 「しょうがないな。えげつない。匠さんも牽制とかするんだな」
 
 「!」
 
 驚いて振り向くと、私の方を見て取締役が言う。
 
 「後ろのうなじから首筋にふたつ。見えるところへ跡がある。久しぶりに見た。営業の奴と別れてからそんなの見たことなかったからな。週末かい?」
 
 あっけにとられて、手を後ろにやる。
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