君がたとえあいつの秘書でも離さない
「……」
「そこへ、川口さん。そして、君は川口さんと特に親しい関係だよね。彼女が蓮見専務と付き合いだしたんだ。蓮見専務は匠さんに紹介しただろうし。一緒にいる君が匠さんと知り合いじゃないとはとても思えなかった」
「あの。本当に、誰だか知らなかったんです。お目にかかったことはあっても」
「そうだろうね。あの、説明会で君が匠さんと目を合わせてから様子が変になった。言ったろ。君のことはよく見ているって。匠さんを少し見てたら、君のことを目で追ってる。しかも、君が出て行ったら子飼いの秘書が匠さんに耳打ちして、すぐに君を追いかけていった」
見られていたのね。
本当に恐ろしい人なんだわ。
匠さんの言うとおりだった。
「そんな目で見るなよ。言っておくけど、相手を研究するのは経営者としては大切なことなんだ。相手の強み、弱みを知ることで攻め方が決まる。君も僕の担当なんだ。僕のやり方くらい見てきたろ?」
確かに、相手のすきなモノをリサーチして、お会いするときはそう言うモノを手土産に、お話のネタになりそうなチケットを事前に取得するなど先回りすることを得意としている人。
それにしても……相手が私でもそうするの?
プライベートですけど。