君がたとえあいつの秘書でも離さない
夜には匠さんからメールが来た。
今度いつ会えるかという話。
彼のスケジュールが詰まってきていて、なかなか時間がとれない。
そんなことを言っていると会えないからと言われ、隙間時間にマンションへ来てくれと言う。
夜なら家に帰るから会える、と。
秘書仲間で彼がいる人は、相手が役員だとこういう付き合いになる人が多い。
土日関係なく、夜も接待が多い。
出張も多く、スケジュール変更も日常茶飯事。
約束なんて、普通の人と同じ感覚でいると、破棄され続けて疲弊して別れる。
結局、同棲するしかなくなったりして、自分を相手に捧げるしかなくなる。
対等の付き合いなんて難しい。
それでも……。愛していれば、その選択を辛いとは思わない。
それしか方法がないなら、自分はそれを選択する。
匠さんは、人柄もそうだが趣味も合うことがわかり、私はますます惹かれていくのが分かっていた。
私が彼を想うのと同じくらい、彼も私を愛してくれていると思う。
だからこそ、無理でもマンションへ行ってしまうのだ。
誰かに見られないように。気をつけながら行く。