君がたとえあいつの秘書でも離さない

 「遙。今どこ?……うん?外の音がする。帰る途中?」
 
 「そうですね」
 ピーポーピーポー♪

 救急車が入ってきて、車が一旦止まっている。
 
 「……遙。うちの近くにいるだろ?うちへ向かってる?」
 
 「え?」

 「俺、今ベランダから外見ながら電話してた。俺が聞いてる音と同じ音が電話からしてる」
 
 「……」
 
 鋭い。
 でも、秘書の人はどうしたのかしら?

 「遙。なんで黙ってる?」
 
 「あ、あの。そうです。そちらに行こうかと思ったんですけど、秘書の方と一緒にマンション入るのが見えて、遠慮しようかと」

 「帰ってきたの、見てたのか?なんで電話してこない。勝手に想像するなよ。彼女はもう帰った」 
< 89 / 274 >

この作品をシェア

pagetop