君がたとえあいつの秘書でも離さない
 
 そして、私にグラスを渡す。
 飲めというの?

 「とりあえず、一口入れろ。そんな、青い顔みたくもない」
 
 匠さんの吐き捨てるような声に驚いて、一口飲む。
 お腹がすいていたので、お酒が喉からお腹に染み渡るよう。
 もう一口飲んだ。
 
 「はあ」

 「遙。我慢はいい加減にするんだ。何でも言えって付き合ったときに言ったはずだ。何があった?」
 
 「今度の大きなお仕事。堂本コーポレーションと一騎打ちになるって。当社は弘取締役が担当するそうです。そして、こちらの担当は匠さんですよね?」
 
 匠さんは返事をしない。
 でも、否定もしない。

< 93 / 274 >

この作品をシェア

pagetop