君がたとえあいつの秘書でも離さない
「仕事の話はしないと約束したはずだが。それに言えば心配するだろ?」
「この間、カフェで匠さんを見ていたのを知られて、秘書の方に助けられてから、匠さんとお付き合いしていると確信しているようでした。そして、自分の秘書が匠さんと付き合うなんて許せないと言われました。それに……」
「それに、何だ。好きだと言われたのか?」
「……え?どうして……」
「抱きしめられたんだろ。だから、あんなに香水の匂いがするんだ。この間、君には俺のモノだと首の後ろにマークをつけて帰したのも、さては見破られたか。こんなことになるだろうと思ってマークをつけてやった。君のことを監視して、自分のものにしようとしているのに、俺が出てきて焦ったんだな。彼が俺を強敵だと認めた、と言うことだ。喜ぶべきかな」
ワイングラスを回しながらつぶやいている。
匠さん……こんな顔をすることがあるの……怖い。
顔を上げてこちらを見た。
光る目が相変わらず私を射貫く。
「遙。心配するな。弘君の考えそうなことは先回りしている。仕事に関しては、まだ彼に負けるとは思えない。新参者の彼に遅れを取るようだったらこの会社も先がない。申し訳ないが、今回の入札もうちがもらう」