僕のキャパシティイズオーバー
ウェッティー先生は水を一口飲んで、MCをするような感じで「さ、こんな感じで」と再び教壇に立った。

「全員行き届くようにやるよりも、ひとりひとり丁寧に応えていくことが大事なんだよ。今度は君たちの番だ!じゃあトップバッターやりたいグループ手あげて!」


シ……ン。


皆俯いてしまった。

…それはそうだ。ウェッティー先生の即席ライブが素晴らしすぎて、このあとにやるなんてハードルが高い。


「ちょっとみんなー。アイドルには積極性も大事なん……」

と、途中で言葉を止めたウェッティー先生は、ニコッと微笑んだ。

「さすが」

そう言って指をパチンッと鳴らした先。

僕の両隣の二人が、先生をまっすぐに見て手を挙げていた。


「じゃあ√soleilの二人、前にきて」


先生が言って二人が立ち上がると、教室のボルテージが一瞬で最高潮に達した。


「これ奏多のためだからねー。貸しだよ」


キャーキャーと叫び声がこだまする中で、旭が微笑んで言った。

奏多はそれに対して何も言わない。

その様子に、僕はぽかんと口を開ける。


「フフッ、むっちゃんもちゃんとうちわあげておくんだよー」

「え?う、うん…?」


僕は自分のうちわを見る。

『好き♡』


……?


意味深な笑みを残す旭とこちらを見ない奏多は、耳が痛くなるほどの歓声の中、ステージに立った。
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