僕のキャパシティイズオーバー
そのとき、扉がコンコン、とノックされた。

顔を出したのは実行委員の子。


「失礼します!√soleilさん、そろそろリハの準備をお願いします…!」

「はい!すぐ行きます!行こう!二人とも!」

「「はーい」」


僕は荷物をまとめて立ち上がった。

その瞬間。


「っ……」


めまいを感じた僕は、一度目を閉じて歩き出そうとした足を止める。


「……睦?」

「どうしたのむっちゃん」


気付いた二人が振り返って足を止める。


「…ごめん。トイレ行きたくなっちゃった!先に行ってて!」


旭が何か察してくれたのか「りょーかいっ」と言って不思議そうな顔をする奏多の背中を押す。

僕は笑顔で二人を見送って、重い体を引きずって個室トイレに入った。

サラシとガードルを脱いで、僕は大きく息を吐いた。


「……汗、すごいな……」


このサラシとガードル。

締め付け感が辛いのもあるけれど、かなり蒸す。

どんな炎天下の中でも薄着になれない僕は、これのせいで本当に過酷な夏を過ごしている。

二人の言うように、せめてちゃんと食べて寝て過ごすべきなんだろうけど…さばききれない仕事が山積みでそうも言ってられない。

僕はタオルで汗を拭き、制汗スプレーをして再びサラシとガードルを手にする。


「僕はマネージャー、僕はマネージャー……」


……今日のイベントが終われば仕事が少し落ち着くはず。

とにかく今日をなんとかやり過ごしたらちゃんと食べてちゃんと寝よう…!


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