【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第100話】

8月22日の朝方のことであった。

無断欠勤したあいつは、自分が座っていたデスクの整理を強行した。

従業員さんたちは、ものすごく心配な表情であいつを見つめていた。

あいつは、にらんだ目付きで従業員さんたち…特にダンナよりも年齢が若い従業員さんたちをにらみつけてイカクした。

あいつは『いつでも受けて立つぞ!!こっちは首をキレイに洗っているから切れるものなら切ってみろ!!』と言う気持ちになっていた。

デスクの整理を終えたあいつは、急にニコニコした表情になった。

あいつよりも若い従業員さんたちに対して『頼むよ…未来のホープくん…』と気安く言いながら肩をポンポンと叩いた。

あいつはその後、湯わかし室にいる女性従業員さんに対してニヤニヤした表情で『かわいいね…』と言うたあとスカートの中に手を入れてストッキングごとショーツを脱がした。

この時であった。

社長さんがビックリした様子であいつを呼び止めた。

あいつは、社長さんを右足でけとばして倒したあと社長さんの背広の内ポケットからさいふを取り出した。

あいつは、さいふの中から現金200万円とオリコカード(クレジットカード)を抜き取った。

その後、あいつは社長さんの背中を思いきりけとばした。

そして、会社から勝手に出て行った。

あいつは、会社から300メートル先にある酒の量販店へ行って、ニッカウヰスキーの大びん3本を買った。

代金は、オリコカードで決済した。

酒の量販店を出たあいつは、物部川の河川敷の公園に行った。

あいつは、ニッカウヰスキーの大びんを空けたあとストレートで一気にガブのみした。

その後、あいつはフラフラとした足取りで河川敷を歩き回った。

その時の様子を武方《たけかた》さんの知り合いの人が目撃した。

武方《たけかた》さんの知り合いの人は、スマホで動画の撮影をした後、大急ぎで武方《たけかた》さんに写メを送った。

高知県で暮らしている知人から届いた写メを見た武方《たけかた》さんは、ビックリした。

時は、夕方6時過ぎのことであった。

武方《たけかた》さんは、アタシがバイトをしているファミマに行って、あいつが極めて危険な状態におちいったことを知らせた。

しかし、アタシは『クソバカのダンナを助ける余力なんかないわよ!!』と言うて怒った。

アタシは、陳列ケースに新しく来たお弁当を並べながら怒った声で武方《たけかた》さんに言うた。

「アタシはクソバカのあいつを助ける余力はないのよ!!もう完全に手遅れになったのにどうやってあいつを助けるのよ!!アタシは今バイト中だから、帰んなさいよ!!」
「とし子さん、こっちは困っているのだよ…すみおさんが会社内でひどいもめごとを起こしたあと勝手に職場放棄をしたのだよ…」
「それがどうしたと言うのよ!!そう思うのであれば、早いうちにあいつの親族に電話してよ!!」
「できたらそのようにしたいのだよぉ…」
「ゴタゴタ言わずに親族に電話してよ!!」
「分かっているよぉ…」
「分かっているのならば早く電話してよ!!」
「だけどね…野市の親族の家はすみおさんのことをカンドーしているのだよ…」
「それじゃあ、ケーサツに頼みなさいよ!!」
「ケーサツ…」
「文句あるのかしら!?」
「文句はないよ…」
「やっぱりケーサツはダメね!!それなら田嶋《くみちょう》さんに頼んで、竹宮《たけみや》の拳銃《チャカ》でドタマぶち抜いてって言おわい!!」
「と、とし子さん…それはやりすぎですよ!!」
「それならあんたもコンクリ詰めにしてドラム缶ごと蒼社川の河口に沈めるわよ!!」
「とし子さん、そんなこわいこと言わないでください!!とし子さんがすみおさんとリコンすると言うのであれば仕方がないと受け入れます。」
「やっとアタシのヨーキューを受け入れたわね。」
「ですがその前に…ひとつだけお願いがあります…」
「はぐいたらしい(あつかましい)わね!!その前にひとつだけお願いと言うのはどういうことよ!?」
「とし子さんがすみおさんとリコンすると言うことは、亡くなったお父さんの夢を反古《ホゴ》にすると言うことだよ…」
「だからどーせいと言うのよ!?」
「とし子さん…お父さまのお墓にあやまりに行ってください…このとおりです…」
「イヤ!!拒否するわよ!!」
「とし子さん、亡くなったお父さまはとし子さんの花嫁姿を見ることだけしか楽しみがなかったのだよ…家族のために何もかもをがまんしてきたお父さんの気持ちを考えたことあるのかな?」
「(キッパリと)あるわけないわよそんなの…バカみたい…」
「とし子さん!!」
「あのね!!アタシは身の危険が差し迫っているのよ!!」
「分かっているよぉ~」
「だったら、煮るなり焼くなり喰うなりしてあいつを始末しなさいよ!!」
「分かっているよぉ…」
「そんなことよりもあんた、早く帰りなさいよ!!」
「分かってるよぉ…」
「ここは職場よ!!人が勤務している職場に居座るなんてドサイテーよ!!あんたは道端で寝そべっている牛なの!?」
「とし子さん、このままでは出れないのだよ…」
「ますますはぐいたらしいわね!!ダンソンジョヒ魔!!それじゃあ、どうしたら店を出ると言うのよ!?」
「だから、お父さんのお墓参りをしてほしいのです…お父さんのお墓にお線香をたむけてほしいのです。」
「イヤ!!拒否するわよ!!」
「とし子さん…今ごろ天国にいるお父さんが泣いているよ…」
「父は地獄《じごく》に堕《お》ちたのよ!!」
「とし子さん、お線香1本をたむけるだけでもいいからお墓参りに行きなさい!!」
「イヤ!!拒否するわよ!!今すぐに帰りなさいよ!!」
「とし子さんがお父さんのお墓参りをすると言うたら帰る!!」

その時であった。

ももけた腹巻き姿の竹宮《たけみや》がやって来た。

竹宮《たけみや》は、武方《たけかた》さんに対して怒った声で言うた。

「おいコラ!!クソジジイ!!」
「なんだよぅ〜」
「女《レコ》がいやがっとんのに無理強いするな!!」
「なんだオドレ!!クソガキ!!ミミズ!!ぶっ殺すぞ!!」
「ほんならお望み通りにしたるわ!!」

(ガツーン!!ガツーン!!)

竹宮《たけみや》は、武方《たけかた》さんのこめかみをグーで殴りつけて倒した。

そして…

「オドレがとし子の父親のもとに行きたいといよるけん、ブイブイみたいにつぶしたろか!!」

竹宮《たけみや》は、倒れた武方《たけかた》さんに対して殴るけるの暴行を加えた。

アタシは、冷めた目つきで武方《たけかた》さんをにらみつけた。
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