【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第103話】

2024年6月3日の朝7時10分頃のことであった。

場所は、札幌市豊平区水車町1丁目の水車公園の近くにある一戸建ての家にて…

家の食卓には、アタシとダンナとダンナの息子のあきとさん(35歳・ビール工場の下請け会社の工場勤務)がいた。

テーブルの上には、たまごサンドとコンソメスープと目玉焼きとグリーンサラダと牛乳が置かれていた。

ダンナは、読みかけの北海道新聞をひざの上に置いた後、2日の日曜日に札幌市内のホテルで行われたダンナの職場の部下の男性の挙式披露宴の話をアタシにした。

端にいた、あきとさんはおもしろくない表情を浮かべていた。

ダンナとアタシの話が終わった後、あきとさんは飲みかけの牛乳をのんでからダンナに話しかけた。

「おやじ…」
「何だ?」
「オレ、自分の人生のことを真剣に考えて…」
「(あつかましい声で)また結婚の話か…」
「おやじはオレにいつまで待てと言う気だ!?」
「あきとの結婚のことについては、おとーさんとおかーさんと3人で話し合うと言うてるだろ…」

ダンナは、めんどうくさい声であきとさんに言うた。

いらだちをつのらせたあきとさんは、ダンナに対して『おやじはいつまで逃げ回っているのだ!?』と怒鳴りつけた。

アタシは、大急ぎであきとさんを止めた。

「あきとさん…もういいでしょ…おとーさんはあきとさんの結婚のことについてはいつでも真剣に話し合うと言うてるのよ…だけど、おとーさんは毎日帰る時間が遅いから、お話ができないのよ…朝は今日のお仕事のことで頭がいっぱいになっているからゆとりがないのよ…だから、時間に改めて話してみたらどうかな…ああ…お腹すいているでしょ…朝ごはんを食べようね…ほら、たまごサンドも目玉焼きもおいしいよ…サラダに大好きなベーコンが入っているよ…お腹がすいていたらお仕事できないでしょ…おかーさんもあきとさんにお嫁さんが来るように応援してあげるから…」

(バーン!!)

思い切りブチ切れたあきとさんは、平手打ちで思い切りテーブルをたたいた後、するどい目つきでアタシをにらみつけた。

その後、カバンを持って家から出た。

アタシは、一生懸命になってあきとさんのいいおかーさんになろうと努力した。

しかし、思う通りに行かずに苦戦していた。

ダンナが出勤してから2時間後のことであった。

家事を終えたアタシは、赤茶色のバッグを持って、豊平川の河川敷の公園へ行った。

ベンチに座っているアタシは、川のせせらぎを聞きながらぼんやりと考え事をしていた。

アタシは…

なぜ、北の都に来たのか…

なぜ、今のダンナと再婚したのか…

アタシは、川のせせらぎに向かって何度も繰り返し問いかけた。

アタシは高知市で発生したあの事件の後、北国《ここ》にやって来た。

アタシは、苫小牧市《とまこまい》にある知人が暮らしているアパートに転がり込んだ。

その後、知人の紹介ですすきののマダムズバーで働き始めた。

(店は会員制である)

その時、チーママからの紹介で会員さんである今のダンナと出会った。

出会ってから2日後に再入籍した。

再入籍した翌日から、アタシはあきとさんのよいおかーさんになろうと努力した。

しかし、うまくコミュニケーションが取れずに空振りばかりしていた。

アタシは…

あきとさんのよいおかーさんになろうと努力しているのに…

うまくコミュニケーションが取れない…

どうすればいいのよ…

この時、アタシの気持ちがものすごく気だるくなった。

そうしたことが原因で、新たな悲劇が始まった。
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