【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第109話】

事件から10日後の2024年7月8日のことであった。

あきとさんがやめかけていた町工場は、社長さんのホーマン経営が原因でつぶれた。

失業したあきとさんは、スマホを置いて家を出たあと行方不明になった。

そしてあいつも、会社から苫小牧の製紙工場へ出向を命ぜられた。

これにより、家族3人が仲良く暮らしていくことができなくなった。

その日の夜8時過ぎのことであった。

あいつがものすごく機嫌悪い顔で帰宅した。

あいつは、ブツブツと言いながらフーッと大きなため息をついたあとソファーに座った。

アタシはあいつに何があったかと聞こうとしたが、そこで大ゲンカになった。

「何や!?オレに言いたいことがあるのか!?」
「あなた!!なんでアタシに八つ当たりするのよ!?アタシはものすごくしんどいのよ!!」
「オレだって、とし子に八つ当たりするつもりはない…けれど、今日にかぎって言えばサイアクだ!!」
「サイアクって…」

あいつは、ひと間隔おいてからアタシに言うた。

「オレ…8月1日付けで苫小牧の製紙工場へ出向を命ぜられた…今日までメッシホウコウで通したのに、おはらい箱になった!!オレは今の会社のつとめをやめることにした!!」
「会社をやめる…それ、本気で言うてるの!?」
「ああ、そうだよ!!」
「それじゃあ、8月1日からは無職の家族3人が家の中でこもりきりなるわよ!!それでもいいの!?」
「ああ、そうだよ!!」

あいつが言うた言葉に対して、アタシはものすごく怒った声であいつを怒鳴りつけた。

「もういいわよ…アタシはあんたがキライになったから言うわよ!!…アタシ!!この家で暮らして行くことに限界が来たのよ!!このままこの家に居つづけたら、伜《クソガキ》に犯されてしまう…じゃなくて、とっくにメチャクチャにされたのよ…メチャクチャにされたその上に、またメチャクチャに犯されるかもしれない…アタシが着替えているところや、あんたとアタシのベッドシーンや、お風呂の中をのぞかれた!!…アタシの洗濯物が入っているかごの中に入っていた下着が盗まれて、ボロボロに汚されたり、鋭利な刃物で切り裂かれたりした!!…あんたの無関心が原因で、伜《クソガキ》がレイプ魔になったのよ!!伜《クソガキ》が近所の家の奥さま方をレイプしたのよ!!」
「何や、あきとのことをそこまでブジョクするのか!?」
「ますますはぐいたらしいわね!!あんたもグルになってアタシと近所の奥さま方をレイプしたからもう許さないわよ!!今から田嶋《くみちょう》さんに電話して、この家をダンプでぺちゃんこにつぶすわよ!!」
「なんだと!!」
「アタシを殴るの!?ジョートーだわ!!アタシもむしゃくしゃしていたからちょうどよかったわよ!!」

このあと、あいつとアタシはドカバキの大ゲンカを起こした。

この時、家の庭に隠れていた竹宮《たけみや》があいつとアタシが殴り合いの大ゲンカをしている様子をみながら『ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ…』と嗤《わら》っていた。

今回の一件で夫婦関係は完全に破綻した。
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