【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第119話】

事件の翌日であった。

アタシは、家に残っている着替えとメイク道具を全部取り出すためにあいつの家に再び来た。

あの時、大きく破損した衣服とインナーと金具が大きく破損したブラジャーとボロボロに汚れたショーツは、姉《おねえ》の長女さんのが使う部屋のチェストに隠した。

荷造りが終わった後、アタシは取り出した着替えとメイク道具が入っているGUのロゴ入りの大きな紙袋とと財布とスマホと貴重品が入っている赤茶色のバッグを持って、あいつの家を出た。

その後、アタシは鎌倉駅からJR横須賀線の電車に乗って横浜《はま》へ逃げた。

アタシが出て行った日は、アイツの姉《おねえ》の娘はお見合い相手から交際を申し込まれた。

娘は、OKの返事を出した。

ふたりは、結婚に向けて準備を始めた。

しかし、先方さんの親御さんは息子さんがあいつの姉《おねえ》の娘とお付き合いをして大丈夫かどうかとキグしていた。

警察署に逮捕されたあいつは、鑑定留置のために鎌倉郊外の拘置所へ移された。

これから数ヶ月にわたって、あいつは精神鑑定を受ける予定である。

かずひこさんは、からだの傷は大したことはなかったが、心的外傷《トラウマ》がひどいので定期的なカウンセリングを受けることになった。

横浜《はま》に逃げたアタシは、再びJRと東急東横線の菊名駅の近くにあるマンスリーマンションへ移った。

バイトは、伊勢佐木町のマダムズバーで働いていた時にお世話になったママからの紹介でJR京浜東北線東神奈川駅の近くにあるイオンモール内のフードコートにあるケンタッキー(フライドチキン屋さん)でバイトすることにした。

ケンタのバイトだけでは足りない分は、横浜アリーナの近くにあるセブンイレブンとかけもちでバイトしてお金を稼ぐことにした。

アタシは、今度こそは女ひとりで生きていくと訣意《けつい》した。

だから、再婚なんか絶対にイヤ!!

7月25日頃であった。

敦賀で暮らしている友人があいつの家にやって来た。

友人が家に来た時、あいつの姉《おねえ》は『とし子さんは、アタシやアタシの父ときょうだいや娘と夫をグロウしたから、ここへ連れてきて、アタシたちにあやまるように伝えてちょうだい!!』と言うてねじ込んだ。

ねじ込まれた友人は、ひどく困惑した。

その日の夜8時頃であった。

友人は、横浜アリーナの近くにあるセブンイレブンにやって来た。

友人は、あいつの姉《おねえ》がアタシに土下座をしてあやまれと言うたので困ってると言うたので、アタシは『そんなことは知らないわよ!!』と怒った。

アタシは、ゴミ箱の整理をしながらあいつの家には行かないと友人に言うた。

「あのね、アタシはあいつの家とはゼツエンしたのよ…あいつのおねえがアタシに土下座してあやまれと言うけど…それはアタシの言うセリフよ!!あんたね、いらないことに首を突っ込まないでよ!!」
「とし子…今回のことはアタシもいけなかったのよ…とし子が結婚したくないと言うたのに、もうしわけないと思っているの…とし子…ねえとし子ってば…」
「あんたの妹夫婦は、あいつにDVの前科があったことを分かっていてお見合いを強行したからものすごく怒ってるのよ!!5度の暴力のうち、4度目のお嫁さんは殺されているのよ!!あいつは殺人の前科があるのよ!!それを知っててどうして止めなかったのよ!?」
「その時は、気持ちがあせっていたのよ…」
「もう許さないわよ!!」
「とし子…どうすれば許してもらえるの?」
「フン、そんなん知らないわよ!!」
「とし子…アタシは許してもらえなかったら生きて行けないの…」
「許してもらえなかったら生きて行けないって、あんたはなに寝たボケたことを言よんで!!」
「寝たボケたこと言うてないわよ…」
「あんたね、泣いたら許してくれると思ったら大間違いよ!!」
「とし子、どうすれば許してもらえるのよ?」
「あんたがどんなに取り繕っても、アタシは許さないわよ!!」
「とし子…」
「何よ!!まだアタシに言いたいことがあるの!?」
「あるわよ…妹夫婦もとし子が暴力の被害を受けたことをもうしわけないと思っているわよ。」
「もう怒ったわよ!!あんたね、ここは人の職場よ!!人の職場にふらりとやって来て営業妨害をするのであれば店長を呼ぶわよ!!」

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