【一気読み改訂版】とし子の悲劇
【第121話】
8月2日の昼前のことであった。
場所は、鶴岡八幡宮の参道沿いの若宮大路にあるおしゃれなカフェレストランにて…
あいつの姉夫婦《おねえふうふ》とさよこと父親は、さよこのお見合い相手とお見合い相手のお母さまと兄夫婦と一緒にランチを摂りながら話し合いをしていた。
この時、あいつの姉《おねえ》が一方的にペラペラとしゃべりまくったので、場の雰囲気がよどんだ。
姉《おねえ》は、さよこに対して『お母さん、お見合い相手の人のご家庭が気に入ったから…早いうちに挙式披露宴を挙げた方がいいわ…ねえ…そうしましょう…』と言うてせかした。
姉婿《ムコ》は『そんなにせかすなよ…』と困った表情でつぶやいた。
姉《おねえ》は、さよこさんの結婚の話をトントン拍子で進めた。
その頃であった。
ところ変わって、長谷東町にある缶詰工場《こうじょう》にて…
作業場では、従業員さんたちは完成した製品を2ダースずつ箱に入れて行く仕事と箱の折りたたみをする仕事に分かれて作業をしていた。
作業場内に正午を知らせるサイレンが鳴った。
従業員さんたちは、休憩室へ向かった。
休憩室にて…
お弁当屋さんの黄色いキャリーの中に入っているお弁当箱を、従業員さんが次々と取った。
お弁当箱を取った従業員さんたちは、空いている席に座ってお弁当を食べた。
かずひこさんもキャリーの中からお弁当箱を取ったけど、ひとくちも食べなかった。
従業員さんたちに支給されるお給料は、7月の支給分から大きく減らされた。
かずひこさんの気持ちのすさみは、さらにひどくなった。
そんな時であった。
社長さんが、かずひこさんのそばにやって来た。
社長さんは、優しい声で『いっしょにごはんを食べようか…』とかずひこさんに言うたあと、となりの席に座った。
社長さんは、てんやもののおすしが入っている容器を置いてから、かずひこさんに言うた。
「かずひこさん、どうしたのかな?」
「何だよあんたは!!」
「私は、かずひこさんと一緒にごはんが食べたいんだよ〜」
「だから、何のために一緒にごはんを食べるのだ!?」
「何のためって、コミュニケーションを取るためじゃないのか?」
「うざいんだよ!!」
社長さんは、ものすごく困った声でかずひこさんに言うた。
「かずひこさんはうちにきてから20年間安いお給料に文句ひとつも言わずにがんばったよね…だから…ごほうびを与えようかなと想っているのだよ。」
「よく言うよクソバカジジイ!!オレが高校を卒業したあと専門学校へ行こうとしたのにキサマのせいで行くことができなかった!!あやまれよバカジジイ!!」
「その時は、かずひこさんのお父さんに借金の保証人をお願いしていたのだよ…うちのセガレが起こしたもめ事の示談金《ジダン》をクメンするために必要だったのだよ…かずひこさんのお父さんは、私の親友だから…」
「親友だからオヤジを利用したのか!?」
「その時の借金は完済できたから…」
「完済できても、またお金を借りるのだろバカ!!」
「うちは経営が苦しいのだよ…信用金庫にユウシの申し込みに行っても断られる…」
「それはあんたの性格が悪いから断られるのだ!!信金に断られたからオヤジのところへカネを借りに行くのか!?」
「他に頼るところがないのだよ~繰り返して言うけど、借金をしたのは必要なお金がいるから…」
「あんたの言うことは信用できん!!」
「それじゃあ、どうすれば許してくれるのかな〜私は、あちらこちらを回ってお仕事をお願いしますと頭を下げているのだよ…」
「キサマのヘラヘラした性格が原因で仕事がもらえないのだよ…ごほうびごほうびと繰り返してばかり言うけど、あんたの言うごほうびって何なのだよ!!」
「かずひこさん、本当にごほうびはいらないのかね…」
「キサマの言うことはデタラメばかりだから、信用できない!!」
「それじゃあ、従業員さんたちに少しだけど手当てを上乗せしますと聞いてもいらないと言うのだね…福利厚生の特典を使って、近くでもいいから従業員さんたちの旅行やプロ野球観戦へ行こうと言うても行かないのだね…もうわかった…他の従業員さんたちはみんな喜んでいるのに、かずひこさんはいらないんだね…」
(バーン!!)
かずひこさんは、弁当箱の中に入っているおかずにツバを吐いたあと社長さんが食べるてんやものの中にドサッと入れた。
「何てことをするのだ!!」
社長さんは、かずひこさんにてんやものをだいなしにされたので思い切り怒った。
かずひこさんは、社長さんに背を向けたあと休憩室から出ていった。
同じ休憩室にいた従業員さんたちも、しらけた表情で社長さんをにらみつけた。
その後、従業員さんたちはよってたかって社長さんをいじりまわした。
遺恨の破砕波《おおつなみ》の第1波は、缶詰め工場にも押し寄せた。
工場では、7月初め辺りから従業員さんたちが次々とやめていたので、深刻な人手不足におちいった。
社長さんは必死になって従業員さんたちの引き留めに出たが、次々と失敗した。
社長さんは、かずひこさんに対してごほうびを与えると言うたが喜んでいた従業員さんたちはひとりもいなかった。
一人でも多く従業員さんたちを引き留めたい気持ちでいっぱいになっている社長さんと従業員さんたちの間で深刻な対立を生んだ。
間もなくこの工場もトーサンする恐れが出たようだ。
このあと、大規模な破砕波《つなみ》が襲いかかろうとしていた。
場所は、鶴岡八幡宮の参道沿いの若宮大路にあるおしゃれなカフェレストランにて…
あいつの姉夫婦《おねえふうふ》とさよこと父親は、さよこのお見合い相手とお見合い相手のお母さまと兄夫婦と一緒にランチを摂りながら話し合いをしていた。
この時、あいつの姉《おねえ》が一方的にペラペラとしゃべりまくったので、場の雰囲気がよどんだ。
姉《おねえ》は、さよこに対して『お母さん、お見合い相手の人のご家庭が気に入ったから…早いうちに挙式披露宴を挙げた方がいいわ…ねえ…そうしましょう…』と言うてせかした。
姉婿《ムコ》は『そんなにせかすなよ…』と困った表情でつぶやいた。
姉《おねえ》は、さよこさんの結婚の話をトントン拍子で進めた。
その頃であった。
ところ変わって、長谷東町にある缶詰工場《こうじょう》にて…
作業場では、従業員さんたちは完成した製品を2ダースずつ箱に入れて行く仕事と箱の折りたたみをする仕事に分かれて作業をしていた。
作業場内に正午を知らせるサイレンが鳴った。
従業員さんたちは、休憩室へ向かった。
休憩室にて…
お弁当屋さんの黄色いキャリーの中に入っているお弁当箱を、従業員さんが次々と取った。
お弁当箱を取った従業員さんたちは、空いている席に座ってお弁当を食べた。
かずひこさんもキャリーの中からお弁当箱を取ったけど、ひとくちも食べなかった。
従業員さんたちに支給されるお給料は、7月の支給分から大きく減らされた。
かずひこさんの気持ちのすさみは、さらにひどくなった。
そんな時であった。
社長さんが、かずひこさんのそばにやって来た。
社長さんは、優しい声で『いっしょにごはんを食べようか…』とかずひこさんに言うたあと、となりの席に座った。
社長さんは、てんやもののおすしが入っている容器を置いてから、かずひこさんに言うた。
「かずひこさん、どうしたのかな?」
「何だよあんたは!!」
「私は、かずひこさんと一緒にごはんが食べたいんだよ〜」
「だから、何のために一緒にごはんを食べるのだ!?」
「何のためって、コミュニケーションを取るためじゃないのか?」
「うざいんだよ!!」
社長さんは、ものすごく困った声でかずひこさんに言うた。
「かずひこさんはうちにきてから20年間安いお給料に文句ひとつも言わずにがんばったよね…だから…ごほうびを与えようかなと想っているのだよ。」
「よく言うよクソバカジジイ!!オレが高校を卒業したあと専門学校へ行こうとしたのにキサマのせいで行くことができなかった!!あやまれよバカジジイ!!」
「その時は、かずひこさんのお父さんに借金の保証人をお願いしていたのだよ…うちのセガレが起こしたもめ事の示談金《ジダン》をクメンするために必要だったのだよ…かずひこさんのお父さんは、私の親友だから…」
「親友だからオヤジを利用したのか!?」
「その時の借金は完済できたから…」
「完済できても、またお金を借りるのだろバカ!!」
「うちは経営が苦しいのだよ…信用金庫にユウシの申し込みに行っても断られる…」
「それはあんたの性格が悪いから断られるのだ!!信金に断られたからオヤジのところへカネを借りに行くのか!?」
「他に頼るところがないのだよ~繰り返して言うけど、借金をしたのは必要なお金がいるから…」
「あんたの言うことは信用できん!!」
「それじゃあ、どうすれば許してくれるのかな〜私は、あちらこちらを回ってお仕事をお願いしますと頭を下げているのだよ…」
「キサマのヘラヘラした性格が原因で仕事がもらえないのだよ…ごほうびごほうびと繰り返してばかり言うけど、あんたの言うごほうびって何なのだよ!!」
「かずひこさん、本当にごほうびはいらないのかね…」
「キサマの言うことはデタラメばかりだから、信用できない!!」
「それじゃあ、従業員さんたちに少しだけど手当てを上乗せしますと聞いてもいらないと言うのだね…福利厚生の特典を使って、近くでもいいから従業員さんたちの旅行やプロ野球観戦へ行こうと言うても行かないのだね…もうわかった…他の従業員さんたちはみんな喜んでいるのに、かずひこさんはいらないんだね…」
(バーン!!)
かずひこさんは、弁当箱の中に入っているおかずにツバを吐いたあと社長さんが食べるてんやものの中にドサッと入れた。
「何てことをするのだ!!」
社長さんは、かずひこさんにてんやものをだいなしにされたので思い切り怒った。
かずひこさんは、社長さんに背を向けたあと休憩室から出ていった。
同じ休憩室にいた従業員さんたちも、しらけた表情で社長さんをにらみつけた。
その後、従業員さんたちはよってたかって社長さんをいじりまわした。
遺恨の破砕波《おおつなみ》の第1波は、缶詰め工場にも押し寄せた。
工場では、7月初め辺りから従業員さんたちが次々とやめていたので、深刻な人手不足におちいった。
社長さんは必死になって従業員さんたちの引き留めに出たが、次々と失敗した。
社長さんは、かずひこさんに対してごほうびを与えると言うたが喜んでいた従業員さんたちはひとりもいなかった。
一人でも多く従業員さんたちを引き留めたい気持ちでいっぱいになっている社長さんと従業員さんたちの間で深刻な対立を生んだ。
間もなくこの工場もトーサンする恐れが出たようだ。
このあと、大規模な破砕波《つなみ》が襲いかかろうとしていた。