【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第14話】

アタシの怒りは、最高潮に達した。

アタシは、あいつの親類縁者全員を地獄へ葬《ほうむ》ると訣意《けつい》した。

あいつの家との関係は、完全に修復することが不能となった。

義父母は、ムカンシンの度合いをさらに高めた。

義姉《あね》は、義父母のせいで気持ちが結婚に向かなくなった。

アタシとの間に生じた亀裂《みぞ》は、さらに拡《ひろ》まった。

時は、2015年7月25日のことであった。

この日、義姉《あね》にエンダンが入った。

義姉《あね》のお見合い相手は、府中市内の信用金庫に勤務している37歳の男性職員さんで、4人きょうだいの三男さんであった。

義父母は、ムコヨウシを強く希望していた。

義姉のお見合いは7月26日に福山市内のホテルのレストランで行う予定であったが、その当日に深刻な事件が発生した。

時は、7月26日の正午前であった。

場所は、ホテルのレストランにて…

お見合い開始早々から、場の雰囲気が非常に気まずくなった。

義姉《あね》と両親の側とお見合い相手と両親の側が向かい合って座っていた。

この時、お見合い相手の男性が席にいなかったので雰囲気がどす黒くよどんた。

仲人さんのBさんは『お見合い相手の男性は休日出勤で来れないので、日を改めてふたりが会うと言うのはいかがでしょうか?』とていねいに説明したので、どうにかまるくおさまった。

奥さまは『ごはんを食べましょうか?』と優しく言うた。

このあと、料理長おまかせのランチメニューが席にとどいた。

その後ランチに入ったが、義姉《あね》はひとくちも食べなかった。

Bさんの奥さまは、ランチを食べていない義姉《あね》に対して優しく声をかけようとした。

その時、義父がお見合い相手の父親にタンブラーの水をかけたあとし烈な怒鳴り声あげた。

「ふざけるな!!何が休日出勤で来れないだ!!殺したろか!!」

それを聞いた仲人さんのBさんが、義父をなだめた。

「お父さま!!落ち着いてください!!」
「あんたは出てくるな!!」

Bさんを押しのけた義父は、お見合い相手の父親にすごんで行った。

「オドレ(お見合い相手の家)!!よくもひなこをブジョクしたな!!」

(ドスーン!!)

思い切りブチ切れた義父は、お見合い相手のお父さまの左肩をグーで殴り付けた。

義姉《あね》のお見合いは、義父がお見合い相手のお父さまを殴り付けた上に、せっかくお世話をしてくださったBさん夫妻に『ヤクザの親分に電話するから覚悟しておけ!!』とイカクしたことが原因でハタンした。

イカクされたBさんは、恐くなったので仲人を降りた。

義父の暴力が原因で、義姉《あね》は結婚することをあきらめた。

その翌日以降、義父母はひどい大ゲンカを繰り返すようになった。

そのまた上に、深刻なトラブルが発生した。

数ヶ月前に、義父母が久永《ひさなが》さんに義姉《あね》のお見合いを頼んでいたことが明らかになった。

久永《ひさなが》さんは、義父母からの頼みでお見合いを引き受けた。

しかし、その直後に別の家の親御さんから『壊れそうな縁談を早く修復してくれ〜』と頼まれた。

急な頼みが入ったので、義姉《あね》のお見合いができなくなった。

それが原因で、義父母と久永《ひさなが》さんの間でより深刻なトラブルが生じた。

久永《ひさなが》さんは『かたくなに拒否している女性を説得しているけど、女性が説得に応じないので困っている…』と言うて、あと少しだけ待ってくれと義父母に言うた。

なんで壊れそうなエンダンを修復したいのか?

久永《ひさなが》さんは『カネがほしいから…』と答えると思う。

女性のお見合い相手(大手企業の管理職)の親は、久永《ひさなが》さんに対して『5000万円だすから、(女性)さんを(女性の婚約者)くんと別れさせてくれ…』と頼んだと思う。

義姉《あね》のエンダンがハタンしてから10日後であった。

久永《ひさなが》さんがあいつの家にやって来た。

久永《ひさなが》さんは、義父母から『キサマはわしらをおちょくっとんのか!!』とえらいケンマクで怒鳴られた。

義父母にし烈な声で怒鳴られた久永《ひさなが》さんは、義姉の仲人を泣く泣く降りた。

その日の夜のことであった。

アタシがバイトをしている桜馬場町のセブンイレブンに、久永《ひさなが》さんがやって来た。

久永《ひさなが》さんは、アタシに対して女々しい声で『助けてくれ…』と言うた。

アタシは、陳列ケースに新しいお弁当をならべながら冷めた声で久永《ひさなが》さんに言うた。

「アタシはあいつの家とリエンしたのよ!!それなのになんでアタシに助けを求めるのよ!?営業妨害をするのであれば帰ってよ!!」
「としこさん、そんなに怒らないでください…ぼくはものすごく困っているのです。」
「はぐいたらしいわねダンソンジョヒ魔!!アタシはDV男の家を助けることはできないわよ!!」
「とし子さん…」
「帰んなさいよ!!」
「としこさん、お願いですからそんなに怒らないで下さい…」
「怒りたくもなるわよ!!あんたはなんで壊れかけているお見合いを無理やり修復させたのよ!?」
「とし子さんはそのように言うけど、私としては困るんだよぉ~」
「ますますはぐいたらしいわね!!お人好しもたいがいにしなさいよ!!」
「分かってるよぉ…だけど、困るのは私の方だよぉ。」
「ますますはぐいたらしいわね!!あんたはカネ目当てで仲人をしていたのね!!」
「とし子さん、私は(男性)くんの両親に世話になったんだよ…世話になったから恩返しをしないといけないのだよぉ~」
「ますますはぐいたらしいわねダンソンジョヒ魔!!」
「だから、(男性)くんの両親から頼まれているのだよぉ…(女性)さんと幼なじみのカレと別れさせてくれと頼まれているのだよぉ…別れさせることができたら、上乗せ分がもらえるのだよ…総額は5000万円だよぉ~」
「ますますはぐいたらしいわね欲に目がくらんだダンソンジョヒ魔!!」
「5000万円がなかったら困るんだよぅ~私のおいが知人の組の上納金《かね》を盗んで、組長の嫁はんをつれて行方不明になった…5000万円は上納金《くみのかね》なんだよぅ…相手は国内でもっとも危険な組織なんだよぅ…おいの妹が人質になっていて、今月中に5000万円を返さないと…コンクリづめにされてしまうんだよぉ〜…」
「そんなの知らないわよ!!あんたのおいが悪い人間に寄って行ったから大事な家族が人質になったのよ!!…そんなことよりも、アタシは今バイト中で忙しいのよ!!帰ってよ!!帰らないと知人の組長呼ぶわよ!!」

久永《ひさなが》さんを怒鳴り付けたアタシは、奥の部屋に逃げ込んだ。

ところ変わって、奥の部屋にて…

白のTシャツを脱いだアタシは、ヒステリックにTシャツを叩きつけた。

続いて、ネイビーのボブソンのジーンズを脱いで、ヒステリックに叩きつけた。

衣服の中から、ブルーのユニクロ3Dホールドワイヤレスブラとエアリズムのビキニショーツがあらわになった。

下着姿のアタシは、ロッカーの扉についている鏡に顔を写した。

鏡に、みにくい表情が写っていた。

アタシは、右手でほがそ(ボサボサ)になるまで髪の毛を思い切りかきむしった。

アタシの表情は、目は真っ赤に染まっていて、ほほはあいつに思い切り殴られた時の大きなきずが残っていた。

許さない!!

あいつの家は、絶対に許さない!!

あいつ家の親類縁者全員を灼熱地獄《じごく》へ墜《お》として、焼き殺してやる!!

アタシは、気持ちの整理がついたら三原市の実家に出戻ると訣《き》めた。

あいつの家と関係を修復することは、もはや不可能だ。
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