【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第33話】

8月6日の午後であった。

この日は、雲ひとつない青空でギラギラと真夏の太陽が照りつけていた。

そんな時であった。

この最近、あいつの家の近辺に濃いめの金髪で黒のサングラスに赤とオレンジの派手なTシャツと白のデニムパンツを着たがらの悪い男がウロウロしているのを見かけるようになった。

がらの悪い男は、桂一郎さんだった。

桂一郎さんは、高松で発生した殺人事件や複数のレイプ事件などでケーサツに逮捕された。

しかし、精神鑑定で心身喪失と診断されたあとショブンホリュウでシャクホウされた。

シャクホウされた桂一郎さんは、帰る家がなかった。

このため、四国各地で暮らしている友人宅を転々していた。

桂一郎さんの友人は、ヤクザ稼業またはヤンキーなど…悪い人間ばかりであった。

だから桂一郎さんは、ヤクザとして生きて行くより他はなかった。

話は変わって…

桂一郎さんがあいつの家にやって来た。

家の玄関の前で、芹華《せりか》さんが花に水を与えていた。

この時であった。

桂一郎さんが芹華《せりか》さんに対して家の中へ入れと凄んだ。

芹華《せりか》さんは、桂一郎さんの言いなりになって家の中に入った。

家の居間にて…

芹華《せりか》さんは、泣きそうな声で桂一郎さんに許し乞いをした。

「お願い!!帰ってよ!!帰ってよ!!」

桂一郎さんは、ものすごく怒った声で芹華《せりか》さんに言うた。

「あのな!!こっちは手ぶらで帰ることが出来ないのだよ!!おい芹華《せりか》!!オドレはいつからセクハラ男のテカケになったんぞ!?」
「イヤ!!やめて…助けて…」
「ふざけるなよ!!おいコラ!!オドレカレは、選挙の時にうちの親分から供託金《ぐんしきん》がほしいので2000万円を貸せと言うた!!親分はカレの気持ちをくみ取って2000万円を貸した…コラ!!いつになったら2000万円を返すんぞ!?」
「アタシ…知らないわ…助けて…」
「オドレが知らんと言うても…鈴原《クソジジイ》がうちの親分と親密な関係があることを知らんのか!!」

桂一郎さんは、芹華《せりか》さんに対してあいつのじいやんがヤクザ組織の親分と交友関係があることなどを明かした。

芹華《せりか》さんは、ただひたすら『許してください…』と泣きながら桂一郎さんに言うた。

しかし、桂一郎さんは芹華《せりか》さんに対してカネ返せと言うて一点張りになっていた。

「イヤ!!許して…許して…お願いだから…」
「だったらカネ返せや!!上級国民《ムシケラ》が作った借金《カネ》はテカケであるあんたが払うのだよ!!」
「アタシには…そんな大金は…持っていません…」
「分かった…だったらこっちは実力行使に出るぞ!!芹華《せりか》が女子校時代の時に担任《センコー》とできていた上に、同棲生活《ドーセー》していた時の写真をネットにばらまくぞ!!」
「やめて!!」

おそろしくなった芹華《せりか》さんは、桂一郎さんに20万円を差し出した。

「お願い!!お願い…」
「何のマネや!?」
「お願い…お願い…」

桂一郎さんは、しぶしぶとした表情で20万円を受けとった。

「分かったよ…今日はこれくらいにしとくわ…けれど、供託金名目で借り入れた2000万円はきっちりと返してもらうからな!!アバよ!!」

桂一郎さんは、芹華《せりか》さんに『アバよ!!』と言うた後、立ち去った。

芹華《せりか》さんは、震える声で泣いていた。

その頃であった。

あいつは阿南市内のハローワークに行って、仕事を探していた。

しかし、なかなか見つからずに苦しんでいた。

履歴書を持って、事業所へ面接に行ったが、不採用の山ばかりが続いた。

あいつは、今もなお自分が犯したあやまちをわびないと言うて抵抗していた。

それが原因で、あいつのじいやんがヤクザの組長と付き合っていたことが大衆週刊誌《しゅうかんし》やタブロイド夕刊などのトップでデカデカと報じられた。

これであいつの信用は、地に墜《お》ちたようだ。
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