【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第39話】

そして9月11日…

あいつの家が崩壊する日がやって来た。

(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)

9月11日の朝8時頃であった。

あいつのじいやんが、家から出たとたんに黒のYシャツに白のスーツを着たやくざの子分たちに拳銃《チャカ》でどたまぶち抜かれた。

その後、家の中にあった家の権利書とじいやんの生命保険の保険金受け取り証書がやくざの子分たちに持ち去られた。

これにより、親類縁者たちは追い詰められた。

その頃であった。

デリヘル店のバイトを終えたアタシは、駅前にあるマンスリーアパートに帰宅した。

この時、ふたつとなりの部屋で暮らしているピンサロの女性従業員さんがアタシに声をかけた。

「としこさん!!としこさん!!」
「ああ、おはようございます。」
「はやくもないわよ!!ニュース速報が入ったわよ!!」

アタシは、この時にあいつのじいやんがやくざに殺されたニュースを知った。

一体どう言うこと?

アタシは、ますますワケが分からなくなったので頭がパニックになった。

さらにアタシは、ピンサロの女性従業員さんから昨日付けの夕刊フジを受け取った。

夕刊フジのトップに掲載されていた写真を見たアタシは、最も強い衝撃《インパクト》を受けた。

「どう言うことよ…」

1面のトップに掲載されていた問題の写真は、あいつのじいやんが桂一郎さんが入り浸りになっているやくざの事務所の組長と一緒に写っていた写真であった。

じいやんの右手には、時価200万円相当の高級腕時計《ロレックス》が入っているネイビーの箱を持っていた。

じいやんは『ワシのケツモチは田嶋《たじま》(今治にあるヤクザ組織)じゃあ〜』とほほえみながらつぶやいた。

ふたりの間にいる男性は、じいやんの同期の議員さんで元徳島県警の幹部であった。

「これって…あいつのおじいさまよね。」
「そうよ…真佐浩《クソバカ》のおじいさまは…やくざの家にコビを売っていたのよ…その結果、おじいさまはやくざの子分たちに殺されたのよ…鈴原家《あのいえ》も、じきに終わるわよ。」
「それよりも、問題の写真はどこから出たのよ?」
「どこって…週刊誌のヤクザ担当の記者が持ち込んだのよ…おじいさまが亡くなった…おじいさまがやくざの家に出入りしていたことが明らかになった…真佐浩《クソバカ》の両親《おや》にも反社会的勢力の知人がいたのよ…これであの家は、完全にアウトよ!!」

話を聞いたアタシは、あいつの親類縁者たちに対する怒りをさらに強めた。

それから7日後の9月18日のことであった。

(キキキキキ!!ドスーン!!ドカーン!!)

事件は、国道55号線の阿南市と美波町の境目にあるトンネルで発生した。

義父母が乗っていた車が、トンネル内で対向車を無理に追い越したことが原因で大破した。

その後、大爆発を起こして炎上した。

あいつは、おじいさまに続いて両親を亡くした。

たのみのつなは、芹華《せりか》さんだけになった。

それからまた数日後であった。

桂一郎さんがあいつの家にやって来た。

桂一郎さんは、あいつに対して芹華《せりか》さんと別れてくれと言うた。

あいつは、桂一郎さんに対して帰れ帰れと言うた。

けど、桂一郎さんは『あんたが首をたてにふるまでは帰らないからな!!』と言うて、まる3日間にわたって家に居座った。

9月21日のことであった。

アタシは、久永《ひさなが》さんからあいつと離婚をしたいのであればじっくりと話し合って決めた方がいいと言われたので、日和佐へ行くことにした。

アタシは、あいつと話し合いをする気は全くなかった…

だけど、久永《ひさなが》さんが話し合えと言うからイヤイヤ応じた。

アタシは、三島川之江インターのバス停から徳島行きの高速バスに乗った。

徳島駅に到着後は、日和佐行きの路線バスに乗り継いで行く予定であった。

事件は、アタシが徳島駅から日和佐方面行きの路線バスに乗ってから1時間後に発生した。

ところ変わって、あいつの家にて…

あいつは、桂一郎さんからブジョクされたことにブチ切れた。

あいつは、桂一郎さんの背中を金属バッドで殴り付けた。

「ふざけるな!!ぶっ殺してやる!!」
「やめて!!やめて!!」
「芹華《せりか》はだまれ!!」

あいつは、芹華《せりか》さんを刃渡りのするどいナイフで斬《き》りつけて殺した。

「ギャアアアア!!」

それから3分後…

桂一郎さんがフラフラになった状態で起き上がったあと、ユニットに保管していた揮発油を持ちだした。

桂一郎さんは、亡くなった芹華《せりか》さんのそばで泣いていたあいつに揮発油を思い切りかけた。

「何するのだ!?」
「フザケルな!!あんたには人生51年分の罪をつぐなってもらうからな!!地獄へ堕《お》ちろ!!」

桂一郎さんは、取り出したジッポライターで、あいつの身体に火をつけた。

「熱い!!熱い!!助けてくれ!!熱い!!おじいさま!!」

次の瞬間…

(ゴゴゴゴゴ…ドカーン!!)

あいつの家は、激しい轟音《ごうおん》と共に大破した。

アタシはその頃JR日和佐駅前のバス停でバスを降りたあと、赤茶色のバッグを持って家の方向へ向かって歩いた。

この時に、美波町《まち》の中央消防署のけたたましいサイレンが鳴り響いていたのを聞いた。

アタシは、遠くで恐ろしい火柱が上がっていたのを目撃した。

あいつの家がある地域で大規模な爆発を伴った火災が発生したことを知ったアタシは、赤茶色のバッグを持って走った。

市街地を離れてから1・7キロの地点にたどり着いた時、中央消防署のサイレンとともにハンショウが聞こえた。

現場の1・5キロ手前に来た時、90度の熱と揮発油のにおいが現場にジュウマンしていたと同時に大パニックが発生した。

「助けてくれ!!」
「熱いよ!!」
「おかーさーん!!熱いよぉ!!」

キンリンの住民のみなさまが助けを求めて走り回っていた。

あいつと桂一郎さんは、灼熱地獄の中で亡くなった。

あいつの家の近辺は、灼熱地獄に包まれた。

アタシは赤茶色のバッグを持って、灼熱地獄と化した地区から出た後、田井ノ浜の海水浴場へ逃げた。

アタシが浜辺に到着した時、着ていた白のブラウスは汗でベトベトに濡れて、ターコイズのブラジャーがすけていた。

砂浜にひざまづいたアタシは、声をあげて激しく泣いた。

もうたくさん…

アタシは…

もう、疲れた…

アタシは、震える声で泣いた。

【第一部・おわり】
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