【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第51話】

その頃であった。

アタシはデリヘル店の待機部屋にいた。

いつでもお客様の元へ行くことができるように準備を整えていた。

サックスブルーのブラジャーとレギュラーショーツ姿のアタシは、鏡に向かってメイクをしていた。

待機部屋のテレビの画面は、お昼の番組『バイキング』が映っていた。

この時、画面がFNNニュースにとつぜん変わった。

画面に映っている女性アナウンサーが、切羽詰まった声で『臨時ニュースを申し上げます!!』と言うたあとニュースを伝えた。

それによると、JR栗林駅《りつりんえき》のすぐ近くにある4階建てのテナントビルの4階にある弁護士事務所に刃渡りのするどいナイフを持った男が事務所にいたスタッフさんたち20人を人質に取って立てこもった事件が発生した…と言うことであった。

ニュースの中で、容疑者の名前が伝えられた。

事件の容疑者は、こともあろうに義弟《おとうと》だった。

ニュースを聞いたアタシは、ひどく動揺した。

ところ変わって、JR栗林駅の付近の通りにて…

事件現場付近に香川県警《けんけい》のパトカー30台が停まっていた。

刑事たちやSAT隊員50人が突入に備えて、現場に待機していた。

義弟《おとうと》は、香川県警《けんけい》に対して『カネと車を用意して、婦警ひとりを連れてこい!!』と要求した。

警察は、すみやかに人質全員の解放を求めた。

けいさくは『オレの要求を受け入れないのであれば、このビルを爆破するぞ!!』と言うた。

このために、事件発生から半日以上に渡ってコウチャク状態が続いた。

事件発生から17時間が経過した。

県警《けんけい》のガマンは、限度を大きく超えたので義弟《おとうと》に対する説得をやめた。

県警《けんけい》は、SAT隊員50人に対してビルに突入して容疑者の身柄確保後に排除せよと命じた。

その後、SAT隊員たちがビルに突入した。

義弟《おとうと》は、ワーッとさけびながら刃物をふりまわしてSAT隊員たちに向かった。

SAT隊員たちは、義弟《おとうと》を取り押さえたあとビルの外へ引きずり出した。

引きずり出された義弟《おとうと》は、用意されていたポールにしばられた。

そして…

(ズドーン!!ズドーン!!ズドーン!!)

現場に待機していた刑事たちが拳銃を使って義弟《おとうと》を撃ち殺した。

義弟《おとうと》を撃ち殺されたあと、刑事たちは一斉に『バンザーイ!!』と言うて叫んだ。

その様子は、生中継で全国一斉に放送された。

人質になっていた事務所のスタッフさん30人は、全員無傷で救出された。

あいつの家の親類縁者たちは、義弟《おとうと》が犯した立てこもり事件が原因で、世間さまから鉄拳制裁《よりきびしいせいさい》を受けることになった。
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