【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第73話】

さて、その頃であった。

ところ変わって、坂出市京町にある居酒屋にて…

あいつは、アタシに去られたことと四国化成《かいしゃ》をクビになったことと転職に大失敗したことが原因でやけくそになった。

あいつは、夜7時頃から居酒屋に入り浸りになっていた。

ビールからきつめのジンまで酒をのみあさったので、メイテイ状態におちいった。

この時、あいつはとなりに座っていた男性客《おとこ》とトラブった。

男性客《おとこ》がのんでいた瓶ビールをあいつがてぇつけたようだ。

「オイ!!何するのだよ!?」
「オドレこそ何や!?」
「オレの酒に手ぇつけるなよ!!」
「酒がないのだよ!!」
「酒がないのだったら注文しろよ!!」
「オドレクソチンピラ!!ぶっ殺してやる!!」

あいつは、目の前にあったジンの空ビンを手に取ったあと、男性客《おとこ》の頭を思い切り殴った。

(ガツーン!!)

あいつに殴られた男性客《おとこ》は、即死した。

さらにあいつは、周囲にいた男性客《おとこ》と乱闘騒ぎを起こした。

降り悪く、この時店内のどこかに竹宮《たけみや》が隠れていた。

あいつが乱闘騒ぎを起こした様子を見た竹宮《たけみや》は、裏口から脱出した。

その後、裏口から100メートル先にある電話ボックスに行った。

ところ変わって、電話ボックスにて…

電話ボックスのガラス窓には、ピンチラ(デートクラブ)のシールがところ狭しと貼られていた。

中にいる竹宮《たけみや》は、緑のカード式電話機で電話をかけていた。

「もしもし組長…竹宮《たけみや》でおます…章平《クソガキ》が店内で乱闘騒ぎを起こしやした…ほんで…店内にいた舎弟《なかま》数人が章平《クソガキ》に殺されました…どないしまひょか?…章平《クソガキ》の親類縁者の家をダンプでぺちゃんこにつぶしまひょか?…組長さん…このままでは終われまへんで…壬生川《にゅうがわ》の武方《クソジジイ》がオレの女《レコ》につきまといをしていた話を聞いたから…武方《クソジジイ》の嫁の実家とあわせてダンプでぺちゃんこにつぶすしかない…組長さん…いかがでしょうか…武方《クソジジイ》はまた女《レコ》にストーカーするようだからいわすしかありまへん…」

竹宮《たけみや》は、山積みされている10円玉を投入口にチャリンチャリンと入れながら電話を続けた。

あいつが店内で乱闘騒ぎを起こしたことが原因で、翌日の日中に恐ろしい事件が発生した。

次の日の午前11時頃であった。

ところ変わって、あいつが勤務している林田町の段ボール工場にて…

(ブブブー!!キーッ!!ドスン!!ガシャーン!!)

この時、田嶋組《たじま》が所有している特大ダンプトラックが工場に衝突した。

衝突したはずみで工場が大きく倒壊した。

それから数分後に大火災が発生した。

ダンプトラックから溢れ出た軽油が段ボールにしみた…

そこに火がチャッカしたようだ。

(ウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウーウー…カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン…)

市街地《しのちゅうしんち》に、中央消防署のサイレンと消防団の詰め所のハンショウが鳴り響いた。

火災現場に、消防車20台が到着した。

その後、消火活動を開始した。

火は3時間後に消し止められたが、中にいた従業員さんたち数人が逃げ遅れて死亡した…被害が広まった。

この時、あいつは欠勤していたので工場にいなかった。

あいつは、今回の1件が原因で坂出《ここ》で暮らすことができなくなった。
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