【一気読み改訂版】とし子の悲劇

【第91話】

それから2日後の昼過ぎのことであった。

ヒサナガさんの家にて、ヒサナガさんの告別式がおごそかな雰囲気で執り行われていた。

その頃、アタシは高知市内《しない》に出掛けていたので、ヒサナガさんの家に弔問《ちょうもん》に行くことをきれいに忘れた。

次の日の朝であった。

うちの食卓に、アタシとダンナとまさおさんの3人がいた。

ふじおさんは、まだ帰宅していなかった。

あいつ(ダンナをうざいと思うようになったので、ここからあいつと表記する)は、あつかましい声でふじおさんはどこへ行ったかとアタシに聞いた。

アタシは『友達の家にお泊まりに行った。』と答えてその場をしのいだ。

あいつは、ブツブツ言いながらココアをがぶのみした。

その後あいつは、ニコニコした表情でまさおさんに話した。

「まさお、好きなカノジョはできたのか?」
「うん、できたよ…今度の休みにとうさんとかあさんに紹介するよ。」
「うちに連れてくるのか…とうさんとかあさんは楽しみにしているよ。」

このあと、まさおさんは大学へ…ダンナは職場へそれぞれ向かった。

それから5分後であった。

家の前にいたアタシは、ほうきを使ってそうじをしていた。

この時、近所の奥さまがアタシに凄んできた。

「とし子さん!!」
「あら奥さま…おはようございます。」
「おはようございますじゃないわよ!!今日もまたクレーム言いに来たわよ!!」
「クレームって…」
「とし子さん!!昨日ヒサナガさんの告別式があった日、あんた弔問《ちょうもん》に来なかったわね!!あんた!!その時間帯にどこでなにをしていたのよ!?」
「どこって…高知市内《しない》に行ってましたけど…」
「市内へ遊びに行きたいからわざとすっぽかしたのね!!」
「違います!!アタシは夕食の材料の買い出しに行ってました!!」
「だったら!!告別式が終わったあとにすればよかったのよ!!」
「奥さま!!あのときは、ダンナが疲れて帰ってくるからお肉をたくさん焼いてあげようかなと思って買い出しに行ったのです!!その後、告別式に行くつもりでいたのです!!」
「その時に、途中で気持ちが変わったから行くのをやめたのでしょ…」
「違います!!お肉と一緒にいためるきのこを買うのを忘れたのです!!きのこを買うために市内へ引き返してまた買いに行ったのです!!…きのこを買い終えてスーパーから出たら告別式の時間帯を過ぎていたのです!!」
「またそんなみえすいたウソをならべているわね!!」
「ウソじゃありません!!」
「ふーん、そうは見えないわよ…まあいいわ…はなし変えるけど、ここ数日の間ふじおさんは帰宅していないよね!!」
「ふじおさんは、お友達の家にいますが…」
「ウソばかり言われん!!ふじおさんに親しい友達はひとりもいないわよ…」
「そんなことはありません!!」
「だったら、ふじおさんの親しい友人の名前をいいなさいよ!!」
「えっ…」

奥さまに突っ込まれたアタシは『いません。』としおらしい声で言うた。

奥さまは、アタシに対してきつい声で『そらみたことか…』と言うたあと、アタシの過去をほじくり返した。

「とし子さん、あんたの再婚は、確か8度目だったわね。」
「そうですが…」
「ダンナさんの再婚は初めてだったわ…前の奥さまとは20年以上夫婦関係は続いたわ…だけどあんたは何で8度も離婚と再婚を繰り返したのよ?」
「どうしてって…前回を入れて7度とも相性が合わなかっただけです。」
「またそうやってウソついているわね…あんたの性格が悪いから結婚生活が長続きしないのよ!!…そう言えば、身体に刺青《いれずみ》を彫っていたよね…あんた、もしかして暴力団《ヤクザや》に出入りしていたのじゃないの?…あんたがヤクザの組長の情婦《おんな》だったのでしょ…それとも、構成員《チンピラ》の元婚約者だったの!?」
「やめてください!!アタシの過去をほじくらないで!!」
「ほじくりたくもなるわよ!!たしか、とし子さんの父親は何年か前にテッポウで撃ち殺されたよね…あんたの父親は家族のためにせっせと働いてきた人と言うのはデタラメよ!!あんたの父親がヤクザと交友関係があるなどが原因で撃ち殺されたのでしょ…そう言う過去があったからふじおさんは精神的に追い詰められたのよ!!そのことがまだ分からないなんでチョー大バカね!!オーッホッホッホッ〜」

近所の奥さまが高嗤《タカビーわら》いをあげた。

思い切りブチ切れたアタシは、奥さまの顔をを平手打ちで思い切り叩いた。

(バシッ!!)

「何するのよ!!」
「はぐいたらしい女ね!!アタシの過去をほじくり返したから、叩いたわよ!!」
「よくもやったわね!!」
「タカビー嗤《わら》いでアタシをブジョクしたからやっつけてやる!!」

このあと、奥さまとアタシは血しぶきが飛び散るレベルの大ゲンカを繰り広げた。
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