雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
雪野の自宅に向かった。古びた建物の前に来て、メッセージを送信する。メッセージならば、雪野の目には届くはずだ。
”今、家の前で待ってる。雪野が出て来てくれるのを待ってるから”
雪野の性格を考えれば、軽い気持ちで金を受け取ったわけではないだろう。出て来てくれる可能性は低い。
でも、このまま会わずに帰ることはできない。
二月の夜は心までも冷え込ませる。ところごろこひびの入った建物の一番上の階を見上げた。
そこに、いるんだろう――?
頼むから、顔を見せてくれ。
”これで、最後でも構わない――……”
そう途中まで文字を入力して消去した。その時だった。
「……創介さん」
暗がりから声がする。
「雪野……?」
声の方に目を向けると、雪野が俺を見つめて立っていた。
「来てくれたんだな」
「こんな真冬の夜、外にいたりしたら風邪をひきます」
その声も表情も、いつもとは違う他人行儀なものだ。
これまでの自分とは違うとでも言いたいかのように、俺に向ける態度のすべてがよそよそしかった。
それでも雪野は出て来てくれたのだ。この機会を無駄にするわけにはいかない。