雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
「……どうぞ」
一番上の五階まで階段で上がり、創介さんを部屋に入れた。大人二人が立てばそれだけで窮屈な狭い玄関。
創介さんが、物珍しそうに視線を動かしていた。
「私の部屋、こっちです」
言われるがままに後について来た創介さんに、私の部屋に入ってからすぐに振り向く。
「……創介さんからすれば、驚いちゃうでしょう? 私は創介さんの家は知らないけど想像することは出来ます。この家全部でも創介さんのお宅の一部屋にも満たないかも。でも、創介さんは、私の家を想像することは出来ましたか?」
必死に冷静を装って、創介さんを真っ直ぐに見上げた。
「……何が言いたいんだ?」
創介さんが私の目を見つめ返す。
「創介さんがこの部屋にいるの、すごく変な感じです。あまりにちぐはぐで笑っちゃいそう」
「そんなことを言いたくて、俺を家に入れたのか?」
その問いには答えずに視線を逸らした。
「創介さんが全然分かってくれないからです! これで、目を覚ましてくれましたか? あなたと私とでは生まれ育った環境も、家族も何もかも違う。ただその日会うだけなら、そんなことを考えずに済んだ。でも、もうそういう訳には行きません」
本当に、この部屋に創介さんがいることが悲しいほどに滑稽に見えた。
私が当たり前に過ごしている場所と創介さんが、どうしようもなく不釣り合いだ。
結局、そういうことなのだ。
「この部屋とあなたがちぐはぐなように、私とあなたとでもちぐはぐなんです。分かったら、もう帰ってくださ――」
「雪野」
懸命に訴える私を、創介さんが無理矢理に抱きすくめる。