雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
「創介さん、放してっ」
力で敵うはずもない。分かっていても、その腕の中で必死に身体を捩らせた。
「ごめん、雪野」
吐き出された声が私を締め付ける。
「おまえを苦しめてるって分かってる。それでも、手放せないんだ」
「創介さん、もうやめて」
どんなに暴れても離してくれなかった。押さえ込むように抱きくるめる。
「雪野は、俺が嫌いか? 俺には何の感情もない? ただ会って、身体だけを繋げる相手だった? おまえにとって俺は、ただの遊び相手だったのか?」
そんなわけない。
でも、私の本当の想いなんて必要ない。
「そうですよ。干渉されなくてラクだったし。き……気持ち良かったから、私がしたかったから、何度も抱かれたんです!」
絶対に涙なんか流さない。
お願いだから、最後までやり通させて――。
「雪野」
私の肩を掴み、創介さんが無理矢理に私の顔を真正面から見つめた。
「俺は、雪野を誰よりも大切に想ってる。これから先もずっと傍にいてほしい。俺がそう思える女は、おまえだけだ」
「創介さん! 私の話、聞いていましたか?」
顔を逸らしても、すぐさま創介さんに頬を両手でしっかりと挟まれた。
「ちゃんと聞け。目を逸らさずに俺を見ろ!」
こんなにも涙が溢れそうな目では、気付かれてしまう――。
「おまえは、俺が初めて好きになった女だ。俺の人生で最初で最後、ただ一人。だから、そう簡単に諦めるわけにはいかない。この手を離せない」
瞬きもせずに、私の本心を見破ろうとするかのように見つめられる。
「私では、創介さんを幸せにはできない!」
「それを決めるのは俺だ。雪野じゃない」
創介さんが強張る私をベッドに腰掛けさせ、その足もとに跪いた。そして私の両手を包み込むように握りしめる。