雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
手のひらにすっぽりと覆われた私の顔に、創介さんの顔が近付き囁くように言った。
「今日、家族がいないって、本当か……?」
「は、はい。母は仕事で弟は合宿に行ってます」
「じゃあ、もう少しここにいても、いいか?」
私が頷くと、そのままベッドに押し倒された。
「そ、創介さん……?」
目を大きく見開いて創介さんを見上げる。
「俺に何も言わずに離れて行こうとした罰だ。今からこの部屋で、雪野を抱く」
「えっ、ま、待ってください――」
慌てる私に構わず、手首をベッドに縫い付けるように握りしめられた。
「おまえが毎日このベッドで眠る度に、嫌でも俺を思い出す。そうして、俺から離れようなんて二度と考えさせないためだ」
「創介さん――」
あたふたとふする私の唇を塞ぎ、喋れないようにしてしまう。
重ねた唇を離し、私を見下ろした。
「……雪野の顔を見るまで、怖くて仕方がなかった」
創介さんが私の手を取り、自分の胸に引き寄せた。
「ほら、まだこんなに激しく心臓が動いてるだろ。もう二度と雪野をこうして抱けないんじゃないかって。怖くて怖くて、どうにかなりそうだった」
スーツの生地越しに鼓動を感じる。
「――おまえが欲しい。どうしようもなく」
創介さんの首に手を回してしまう。
もう抗えない。
もう二度と触れることはないんだと思っていたのに、今、こうしてここに創介さんがいる。
「……好きだ、雪野」
初めて創介さんの口から出た言葉。
それだけで、また涙を溢れさせてしまう。
「出会った日からずっと、おまえのことが好きだった――」
小さなベッドの上で寄り添い合うように抱き合った。
私の身体を形作るものすべてを確かめるように、一つ一つキスを落とし優しく指を滑らせる。
その触れ方に、心が震えて仕方がなかった。