雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
同じ家に住んでいながら、父とはほとんど言葉を交わさない。
小さい頃から、父親として甘えたこともなければ遊んでもらった記憶もない。常に丸菱の社長として俺の目に前にいた人だ。
縁談を破談にしてからは、より交わす言葉は少なくなった。でもそれは、俺のすることに何も言わなくなったとも言える。
平日は、普通の社員の二倍の業務をこなし、休日は宮川氏の邸宅に出向く。
宮川氏は決して俺には会おうとはしなかった。でも、顔を見て謝罪するまで、諦めるつもりはない。
雪野の自宅に行った日以来、雪野には会っていない。
(少しでも休んでください。身体に気をつけて)
いつも、電話越しに聞く雪野の言葉はそれだった。その言葉に複雑な心境になる。
”会えなくて寂しい”
本当はそんな言葉を聞きたいと思っていると知ったら、雪野はどうするだろう。
一人、馬鹿馬鹿しいことを考えては息を吐く。
俺は、こんなにも会いたくてたまらないというのに――。
ジャケットも着たままで、ベッドに身体を投げ出す。疲労困憊の身体は、いとも簡単に鉛のようにベッドに沈み込んで行く。
雪野の誕生日には、雪野の笑顔が見たい――。
目を閉じれば、愛しい人の顔が浮かぶ。