雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
ようやくやって来た、約束の雪野の誕生日。なんとか待ち合わせ場所に時間通り到着することが出来た。
駅の雑踏の中に立つと、こちらに向かって走って来る雪野が目に入った。
「遅くなってごめんなさい!」
久しぶりに見る雪野の姿に、自然と自分の表情が緩んで行くのが分かった。
「雪野……っ」
雪野が通行人にぶつかるのを見て、緩んだ表情がいっぺんに強張る。
「そんなに急がなくていい、危ないだろ!」
すぐさま駆け寄り、よろけた雪野の腕を咄嗟に取った。
「大丈夫か?」
「すみません、でも大丈夫」
雪野が俺に微笑む。至近距離で雪野を感じれば、ようやく安心できた。
会いたくてたまらなかった人がここにいる。
雪野の誕生日であるこの日、思いのすべてを雪野に伝える。