雪降る夜はあなたに会いたい 【上】

「理人を、小さな時から奴隷のように扱っていた。理人が耐えられなくなって、母親に泣きついて家から出て行くようにと、傷付けることばかりした。なのに、理人は母親のために、俺に何をされてもじっと耐えていた」

榊君の居場所を奪い続け、その結果、優しい子だった榊君を変えてしまったのだと言った。

「そして、理人の母親にも。泥棒猫だのあばずれだの。思いつく限りの汚い言葉を吐き続けた」

そして、榊君のお母さんの心を壊してしまった――。

それは、聞いているだけで耳を塞ぎたくなるようなことばかりだった。

「……どうして、そこまでしなければならなかったの?」

創介さんの目が激しく揺れているのが分かる。その眼差しの中に恐れが見えた。

これだけのことを話すのは、私が考える以上に苦しいはずだ。

でも、創介さんは自分を罰するかのように言葉にしている。それが分かっていても、聞かずにはいられなかった。

「ただ、俺が弱くて醜かったからだ。最初は、大切な人を失った寂しさから。俺が失ってしまった母親という存在に、無条件に愛されている理人が妬ましかった。俺の母親が苦しんでいる陰で父の子どもまで産み、まるで死ぬのを待っていたかのように家に入って来た継母が許せなかったから……」

一度、創介さんが亡くなったお母さんのことを話してくれたことがある。

病弱だったけど、とても優しい人だったと。
幼い創介さんにとって、お母さんだけが、心から甘えられる人だった。

一番誰かに甘えたい年頃に、そんな存在を失った。

「俺は、強くて厳しい父親に向けられない怒りの矛先を、弱い方の存在にぶつけた。そしてこれまで、犯した罪にも向き合わずに逃げて来た。おまえに知られたくなかった本当の俺は、こんな男だ」

そこまで言うと、創介さんは大きく息を吐いた。

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