雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
「――理人と理人の母親への罪は、一生背負い向き合い続けて行かなければならないものだと思っている」
一瞬その目を閉じて、そして真っ直ぐに私を見つめた。
「こんな男でも、雪野と生きて行きたいと言っていいか?」
激しく揺れる眼差しに胸が締め付けられる。
鋭く強い視線でありながらどこか怯えている。創介さんの感情のすべてを表しているような目に、涙が込み上げて何度も頷いた。
何を聞いてもこの気持ちは揺らがない。すべてを受け入れたいと思うだけだ。
「もう覚悟はできいます。創介さんの傍にいる覚悟です。創介さんの過去も全部一緒に背負いたい――」
そう絞り出すように言うと、創介さんに強く抱き寄せられた。
「雪野、ありがとう」
きつく抱きしめた後そっと身体を離す。
「二年。二年、俺に時間をくれ」
創介さんが私の両肩を掴み、私に視線を合わせた。
「あの家に生まれたからには責任があると思っている。二年は仕事にすべてを懸け、そして父親を納得させたい。ずっと昔から決まっていた見合いを反故にした相手方への責任も取りたいと思ってる。俺が出来ることをやり尽しても、それでも父が俺と雪野の結婚に納得しなかったら――」
創介さんの視線の意思の強さに、瞬きをするのも忘れた。
「その時は、榊の家を捨てて迷わず雪野を選ぶ。これだけは、俺の意思であって絶対だ」
「そんな……っ」
「――雪野」
鋭い声が私の言葉を封じる。
「俺はおまえが欲しいと言い、それでいて二年待ってくれと言うような傲慢な男だ。それでも、雪野を想う気持ちだけは誰にも負けない。俺のそばにいてくれる雪野に、俺のすべてをやるよ。もう、俺はおまえのものだ」
創介さんがジャケットの内ポケットから何かを取り出し、私の手のひらを持ち上げた。
「……これに、俺の想いの全部を込めたから。雪野との約束の証だ」
右手の薬指を滑って行く指輪に、思わず目を見開く。