雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
9 誓い【side:創介】
決意と覚悟をすべて込めた指輪を雪野の細い指に滑らせると、綺麗な目で微笑んだ。
* *
それからも、宮川氏の元に通い続けた。決して顔を出してはくれなかった。そんな日が半年ほど続いた頃。
その日も、これ以上は待てないと帰ろうとした時だった。
邸宅の門構えに宮川氏が出て来た。黒塗の車の迎えが来て、宮川氏の秘書が車を降りる。こうして宮川氏の顔を見るのは、あの見合いの日以来初めてだった。
深く頭を下げる俺の目の前を無言のまま通り過ぎて行く。
「おはようございます」
秘書が、宮川氏に挨拶をする声が聞こえる。
「――そこの男に伝えておけ」
宮川氏の威圧感のある声が朝の空気を張り詰めさせる。
「もう終わったことだとな」
それだけ言うと、車に乗り込みすぐに走り去って行った。
無意識のうちに深く息を吐いていた。
許されるとも思っていない。これから、多かれ少なかれこの代償は払うことになる。
でも、それは俺が背負い取り戻さなければならないもの。
それくらいのものがあった方が、仕事に緊張感があっていい――。
そう、自分に言い聞かせて苦笑する。
宮川氏と同時に、俺にはもう一人、向き合わなければならない人間がいた。