雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
盛岡駅に着くと、駅構内にある売店に入った。新幹線の時間までにはまだ余裕がある。店内に並べられた土産物のお菓子を手に取りながら、考え込んでいた。
「何を見てるんだ?」
創介さんの声が背後から聞こえて、箱を手にしたまま見上げた。
「お土産のお菓子を選んでいるです。家族の分はすぐに決まったんですけど、バイト先の人の分は、やっぱり悩んじゃって……」
そう言うと、私の顔の隣から創介さんも覗き込ん出来た。
「バイト先の人?」
「はい。ここに来るために、バイトのシフト代わってくれたパートさんなんです。だから、お礼にと思って」
「それなら、俺もその人に感謝しないとな。俺も一緒に選ぶよ」
「本当ですか?」
驚いて見返すと、何故だか嬉しそうに頷いた。
「ありがとうございます。助かります!」
こんな風に創介さんと一緒に買い物なんかしたことはないし、一緒に買う物を選ぶなんてこともない。つい、はしゃいだように声を上げてしまった。
けれど、二人で選び始めてすぐに、私は困り始めた。
「……創介さん、そんなに買えないです。持って帰るのも大変」
「そうか? そもそも、ここにあるもの、あまりに値段が安すぎないか? 数を増やさないと感謝の気持ちにならないだろ」
創介さんは両腕に抱えるように箱を持っている。ざっと見ても、十箱近くはある。
「ここはただのキオスクで高級菓子店じゃないですから。高い物にも限度があります。それに、創介さんの選んでくれたこのお菓子なら一箱で三千円するので、十分立派だと思います」
そう伝えて、彼の腕の中から九箱を奪う。
「おい。一箱でいいのか?」
そんな私に慌てたように創介さんが声を上げた。
「じゃあ、パートの竹田さんの分と他の皆さんの分、二箱買います。それならいいですか?」
私がそう問いかけると、不服そうにしながらも「おまえがそれでいいなら」と頷いた。