雪降る夜はあなたに会いたい 【上】
5 決断【side;創介】
日曜日だというのに、朝からスーツを着てダイニングへと向かう。
いつもより首元が締め付けられているように感じるのは、気のせいじゃない。
「――私の言ったことをようやく理解したようだな」
既に食卓に着いていた父親が俺を一瞥すると、微かに安堵の表情を浮かべた。
「何も言わずに逃げ出すようなことはしませんよ」
もう、逃げも隠れもしないさ――。
窓の外には、嫌味なほどの晴天が広がっていた。
この日、見合いが行われる。丸菱にとって重要な縁談であり、絵に描いたような政略結婚。それは、三年前までの俺が、何の疑問にも思わず見ていた未来そのものだ。
なのに、今では、決して受け入れられない未来になっている。