ラストチャンス
うちのクラスは文化祭で劇をやることになった。40人クラスだったから半々で演者と裏方に分かれることになって、私も彼も同じ裏方担当になった。

裏方の中でも5人は演出とか脚本とか監督とかだったから、残りの15人で照明音響、小道具大道具に分かれようってなって。で、「楽そう」って理由で照明音響を選ぶ人が多くて、残った6人で小道具大道具を作ることになったんだよね。まあ、照明音響もなかなか大変そうだったから、結局人数多くて良かったのかもしれないけど。

それで、その6人が男女3人ずつでいい感じのバランスだったんだけど、そこに私も彼も含まれていた。その準備の時に始めて話したんだったかな…。見た目のイメージそのままに、彼はとにかく優しくて誠実な人だった。

私は吹奏楽部で、 文化祭で演奏する機会があったからそっちの練習にも行かなきゃいけなくてクラスの準備を早めに抜けていたんだけど、彼がその時間を気にして声かけてくれたり。準備が遅れていたら責任もって残って作業してくれたり。

2人きりではないけど、一緒に買い出し行ったりしたり、協力して道具を作ったりしているうちに、段々彼のことを人としてだけじゃなくて、異性としていいな、って思うようになっていって…。7月の文化祭が終わった後、その6人でささやかな打ち上げをした時に、思い切ってLINEを交換してもらった。

ほんとあの時、消極的な私がよく頑張ったなって思う。盛り上がったその場の雰囲気っていうのもあるけど。でもやっぱり、彼がほんとに優しい人だってわかってたから行動できたんだよね。

それをきっかけに、夏休みとかたまにLINEするようになって。大抵私が彼の部活の大会の応援したりとか、彼が課題の分からない問題質問してきたりとか、すぐ終わってしまう会話だったけれど。それでも、LINE交換したことでだいぶ距離が縮まったんじゃないかな。なんて思っているうちに夏は終わって私たちは部活を引退した。
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