大切なもの
美幸が教室に入ると乃愛が駆け寄って来た。
「美幸。放課後、屋上でまってるね。」
「え?乃愛?」
突然、乃愛に話掛けられ驚きを隠せない美幸。
心なしか、乃愛の目が腫れている様に見えた。
「早く放課後になると良いね?」
加奈子が笑顔で言った。
「うん…」
─────…
今日は何だか長い一日だった。
美幸はそう思いながら屋上のドアに手を掛けた。
「美幸…」
乃愛が居た。
「時間がないから、手短にな。」
キオがドアの真横に居てそう言った。
乃愛はキオの言葉に頷いた。
「美幸…ずっと携帯無視しててごめんね。」
乃愛が涙を流した。
「え?泣かなくてもいいじゃない。」
「美幸…美幸は私にとって、凄く大事な友達だよ。」
「うん…わかってるよ。」
「時間だ。行くぞ、乃愛。」
キオが後ろから声を掛けたが、乃愛に反応がない。
「乃愛!行くぞ!」
キオが大きな声を出すと、乃愛の肩が揺れた。
「み…ゆき…大好きだよ…」
乃愛が泣きながらいった。
「今日迄ギリギリ伸ばしたんだ。行くぞ。」
キオは乃愛の手を取り、屋上を出た。
「…何?何なの?」
美幸は乃愛と話せた嬉しさと、キオの言動のおかしさに混乱した。