急な辞令に納得いかないので人事部長を襲ってみたところ、返り討ちにあった件
人事部長と私の面談は、それから1時間経っても話が平行線のままで業務終了のベルが鳴る。
続きはそれじゃあご飯でも食べながらってことで、人事部長行きつけの焼き鳥屋へとなだれ込む事になったのだった。

注文した物を待つ間も、注文した物がテーブルへと運ばれてきてからも、ああだこうだと食い下がるが、「もう決定したことですので」ってな具合でびくともしない人事の壁。

悔し紛れに人事部長オススメのネギマと日本酒を交互に口に運ぶと、あら、美味しい。
くっそースパコンのくせに美味しいもの食べてるじゃないか!
半ばヤケになりながらジャンジャン注文してバクバク焼き鳥を食べて日本酒をあおる。

人事部長も私のペースに合わせて飲み食いしていたようだったが、開発部イチの酒豪と謳われた私には敵わなかったのだろう。
いつの間にやら目の前の憎き相手は酔いがまわったせいで毒っ気が抜けた、只のイケメンに成り下がってしまっている。

……いやあーん。か、わ、い、い♡

情が無さそうなクールな表情もそそられるが、酔って無防備な表情にもグッとくるものがある。

どうせ辞令がひっくり返されないのなら、意趣返しにこの隙だらけになったイケメンを襲ってやれ。
酒の力も相まって、人事部長、いや、佐藤俊生に下心タップリにこう囁いてみる。

「佐藤さん?佐藤俊生さん?酔っちゃいました?帰れますか?それともどこか休憩していきますか?」
「うーん帰る?……帰れにゃい……」

むにゃむにゃ何語とか呟くイケメン。
こりゃイケる!!

「これじゃあ帰れませんねえ?じゃあすこーしだけ、ほんのすこーしだけ、休憩していきましょうね?」

そうして私はケモノの心を親切心で覆い隠すと、千鳥足のイケメンの腕を肩にかけ、まんまと一番近くのホテルへと連れ込むことに成功したのだった。

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