振られた僕と雨宿り先で出会った不思議な少女
 どれほど時間が経ったのかわからないが、たくさん泣いたおかげで少しだけすっきりして顔を上げる。
 少女が優しげに笑みを浮かべていた。


「もうよいのか?」

「はい、たくさん泣いたおかげですっきりしました。その、ありがとうございました。僕なんかのために時間を割いていただいて」

「それは構わないが、その僕”なんか”って、自分を卑下するのは一体何なのだ?」

「え、いやだって……。僕何の取り柄もないですし、つまらない人間で……」

「ああ、もうよい。そうやって、自分を卑下するのはやめろ」


 僕の言葉を遮って少女が言う。
 そんなことを言われても、卑下しているつもりなどない。

 昔から両親には出来の悪い子や何の取り柄もないなど言われていたし、美優にはつまらないと言われたしで、ただ事実を言っているだけだ。

 なのに、どうして少女はそんなことを言うのだろう。


「其方は自分で思っているよりも良いところがたくさんある。例えば、素直に感謝を伝えられたり、脱いだ服を綺麗に畳んでいたり、言葉遣いが綺麗なところ。この短時間で、我は三つも其方の良いところを見つけたのだ。だから、其方にはもっとたくさん良いところがある」

「でも、そんなの当たり前のことですし……」

「その当たり前ができない奴がこの世にはたくさんいるのだ。それが出来ていることを誇りに思うがいい」


 こんなこと今まで誰にも言われたことない。
 あんなに優しくしてくれていた美優もそんなこと言ってくれなかった。

 なのに目の前の少女は初対面だというのに、こんなにも優しい言葉をかけてくれる。
 それを嬉しく感じて、止まったはずの涙がまた出てくる。
< 13 / 25 >

この作品をシェア

pagetop