振られた僕と雨宿り先で出会った不思議な少女
「おい、また泣いているではないか。我は何か言ってはいけないことを言ってしまったか?」
「違うんです。……ただそんなこと言われたことないから嬉しくて」
「そうか。其方は泣き虫じゃな」
少女が優しく頭を撫でてくる。
年下の子にされるのは恥ずかしいけど、先程少女の胸で泣いてしまったよりは全然ましだ。
それになんだかそれが心地良い。
「そう言えば其方、名はなんという?」
「相原圭です。あなたは?」
「圭か、良い名じゃ。我は伊鈴(イスズ)だ」
「伊鈴さん、綺麗な名前ですね」
「そうであろう」と自信ありげに伊鈴さんが笑っている。
なんだかその姿が可愛くて少し笑みが溢れる。
「やっと笑ったな。いい顔できるのではないか」
「え……?」
「先程までの暗い表情よりも、その方が何倍もいい。そうだ、其方に見せたいものがある。ついてくるがいい」
伊鈴さんがそう言って部屋から出て行こうとするので、慌てて立ち上がりついて行く。