振られた僕と雨宿り先で出会った不思議な少女
「伊鈴、なんでこいつがここにいるんだ」
そちらに視線を向けると、桜のすぐ側に長い銀髪を一本に結んでいる綺麗な男がいた。
「おー、悠(ハルカ)。其方もこちらに来たらどうだ?」
悠さんというらしい人は、伊鈴さんに言われた通り近くに来る。
彼は僕と同じような紺色の着流しを着ているはずなのに、僕よりもシュッとしていて様になっている。
僕よりも年上なのか、大人びた雰囲気だ。
「圭、此奴はな悠といい、我が昔から面倒を見ている子だ」
伊鈴さんは楽しそうに彼を紹介してくれるが、ずっと悠さんが睨んできていてそれどころではない。
なんで僕こんなに睨まれているのだろう。
綺麗な顔も相まって迫力があり、怖くて目を逸らす。
「悠、此奴は圭といってな……って、そんなに圭を睨むでない」
「嫌だ。こんな得体の知れない奴信用できない。早く追い出した方がいい」
悠さんはやはり険しい顔のままだ。
ここはお暇した方がいいだろうと、伊鈴さんに伝えようとすると、彼女が悠さんを宥めるように
「圭はそんなに悪い奴ではないぞ?」
「まだ出会って時間も経ってない。なんでそんなこと言えるんだ」
「あんな風に泣く奴が悪いはずがない。それに圭は優しい子だ。酷いことをされたというのに、其奴のことを悪く言わない。それで自分を悪く言うのはどうかと思うが……」
そう言って、伊鈴さんがまた頭を撫でてくる。
僕のことを動物か何かだとでも思っているのだろうか。
視線を感じてそちらに顔を向けると、悠さんが先程よりも睨んでいて、怖くてすぐに顔を背ける。