振られた僕と雨宿り先で出会った不思議な少女
「だからそんなに睨むでない。圭が怖がっているではないか」
「嫌だ」
二人の関係性は知らないが、いきなり知らない人がいたら、警戒するのもわかる。
だがそんなに睨みつけてくるのはやめてほしい。
そんな悠さんに伊鈴さんは困ったように笑いながら
「とにかく圭は悪い奴ではない。悠も此奴と話せばわかる」
「俺はこいつと話す気はない」
「いつから其方はそんなに可愛げがなくなったのだ。昔はもっと我の言うことを聞いてくれていたではないか。……我は悲しいぞ」
すんすんと鼻を鳴らしながら、伊鈴さんが袖で目元を拭う。
「あの、大丈……」
「わかった。わかったから泣くな」
僕の言葉を遮って悠さんが慌てたように言う。
それを聞いた伊鈴さんはぱっと顔を明るくする。
「そうか、悠が圭と仲良くしてくれると我は嬉しいぞ」
「……さっきの嘘泣きだっただろ」
「さて、何のことやら」
恨めしげに伊鈴さんを見る悠さんに惚けたように少女が言う。