振られた僕と雨宿り先で出会った不思議な少女
　こういう軽口を言い合える仲が羨ましく感じる。

　なんだか微笑ましいと思いながら二人を見ていると、悠さんがまたこちらを睨みつけてくる。


「おい、何笑ってるんだ」

「あ、……えっと、その……」

「だから何だ」

「その、二人のやり取りが微笑ましいなと思って……。って、すみません。失礼でしたよね」

「別に構わん。圭が笑ってくれるなら、これくらいのやり取りならいくらでもしてやる」


　伊鈴さんがにこりと笑う。
　「俺はこいつが笑おうがどうでもいい」と、悠さんはそっぽを向く。
　そんな彼の様子に伊鈴さんは苦笑している。


「こちらこそ失礼な態度をしてしまいすまないな。此奴は普段はもっといい子なのだが、少しばかり警戒心が強くて、其方への当たりが強くなっている。だから許してやってくれ」


　伊鈴さんが頭を下げてくる。
　まさかそんなことをされると思っていなくて、僕は慌てて伊鈴さんの頭を上げさせる。


「悠のことで気を悪くしていないのか？」

「睨んでくるので怖いとは思ってましたけど、全然怒ってなんかないです」


　伊鈴さんがしゃがんでほしいと言うので、言われた通りにしゃがむと彼女が頭をわしゃわしゃと撫でてくる。
　やはり伊鈴さんは僕のことを動物だとでも思っているんだろう。
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