振られた僕と雨宿り先で出会った不思議な少女
 目が覚めると、知らない天井があった。
 体を起こすが、すぐに頭がくらくらして元の姿勢に戻る。

 視線を下に向けると紺色の着流しを着ていた。
 先程まで風呂に入っていたはずなのに、何故こんなところで寝ているのだろうかとぼーとする頭で考える。


「目が覚めたのか」


 声の方に顔をゆっくり向けると、この家の家主であろう少女がいた。

 しかし先程と違い、その頭には狐の耳がはえていた。

 狐の耳?
 何かのコスプレでもしているのだろうか。

 そんな僕の考えを中断するように少女が話し出す。


「あと少ししたら上がると言うから待っていたのに、中々上がってこないから様子を見に行こうとした時に、鈍い音が聞こえたから焦って行ったら其方が倒れていて驚いたのだぞ」

「倒れて……」

「そうだ。其方逆上せて倒れたんだ。だからあまり長湯するなと言ったのに」


 自分よりも年下だろう少女に何故か叱られている。
 「すみませんでした」と謝ると、少女は怒ったように


「謝るくらいなら、逆上せる前に上がってこい。其方が倒れているのを見つけて、我がどれだけ心配したと思ったのだ」

「すみません。ご迷惑おかけしました。……ところで、その頭に生えている耳って」


 まだ逆上せているらしく頭がぼーとするが、先程から目に入るそれが気になり尋ねる。
 すると少女は慌ててその耳を手で隠す。


「これはだな、えっと、その……。まあ、気にするでない」


 気にするなと言われても、気になってしまい少女の頭に生えている狐の耳をじーと見てしまう。


「そんなに見るでない。まだ逆上せているのだろう? もう少しここで休んでおれ」


 そう言って少女が部屋から出ていく。
 少女の狐の耳や美優のことなどが頭に浮かぶが、眠気が襲ってきて、気づけばまた意識を手放していた。
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