アンコール マリアージュ
 「真菜、夕飯どうする?外に食べに行くか?」

 マンションに着くと、真が真菜にそう声をかける。

 真菜はうーんと考えてから、首を横に振った。

 「ううん。ここで食べたいです。私、何か作りますね」

 そう言ってキッチンに立つ。

 やがてダイニングテーブルに並べられた数々の料理に、真は驚いた。

 「こんなにたくさん作ったのか?」
 「ええ。冷蔵庫に残ってる食材、全部使い切ろうと思って。作り過ぎたものは、冷蔵庫に入れておきますね。レンジで温めればすぐ食べられますから」

 真は、真菜の言葉を頭の中で反復する。

 「真菜?それってどういう…」

 真菜は、箸を置いて真に頭を下げた。

 「真さん、今まで本当にありがとうございました。私、明日寮に戻りますね」
 「えっ…」

 言葉が出て来ない。

 だが、先程あの若い男性に自分が言った言葉を思い出す。

 (真菜はもう自由だ)

 引き留める事は出来なかった。
< 101 / 234 >

この作品をシェア

pagetop