アンコール マリアージュ
 微かにカチャッという扉を開ける音や、コトッと何かを置く音がする。

 やがて、コポコポという音が聞こえてきて、真菜は思わずふふっと笑う。

 「真さん、コーヒー淹れてる」
 「おっ、すまん。聞こえたか?」
 「もっと聞きたい」

 真菜は、目を閉じたまま思い出す。

 ソファに二人並んで座り、コーヒーを飲みながら他愛もない話をした日々を。

 「楽しかったなあ…」

 呟くように言うと、真菜は微笑んだままスーッと眠りに落ちていった。

 「…真菜?」

 小さく呼びかけると、返事はない。

 真はふっと笑みをもらして呟いた。

 「お休み、真菜」
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