アンコール マリアージュ
 「こんにちは!いらっしゃいませ」

 真菜は、美佳と一緒に、地下駐車場の車から降りてきたご家族に挨拶する。

 「こんにちは。今日はよろしくお願いします」

 そう言うお母様の後ろで、若いパパとママが男の子と手を繋いで辺りをキョロキョロと見渡している。

 「お母さん、ここってどこ?いつものレストランに行くんじゃなかったの?」

 ご両親は、顔を見合わせて笑う。

 「あのね、由香里(ゆかり)。実はお父さんとお母さん、あなた達にウェディングフォトをプレゼントしようと思って」
 「は?何それ?」

 男の子を抱いたママは、キョトンとする。

 「あなた達、結婚式挙げてないでしょ?だから、せめて写真だけでもって思って、ここを予約したの。これからウェディングドレスを着て、三人で写真を撮ってもらいましょうよ」

 ええー?!と、パパとママは驚いて仰け反る。

 「何それー?聞いてないんだけど!」
 「ふふ、驚かそうと思って黙ってたの。どう?ドレス、着てみない?」
 「ええー、ちょっと待って。私、今日髪もボサボサだし、化粧もしてないし、こんな格好だし…」

 すると、新婦のお母様が笑い出す。

 「何言ってんの。これからドレスに着替えるのよ?ヘアメイクもしてもらえるし」
 「嘘っ!ほんとに?ど、どうしよう」

 ママは、パパを振り返る。

 「由香里、ドレスずっと着たがってたじゃない。お父さんもお母さんも、その事気にしてくれてたんだよ。良かったじゃない」

 そう言って、新婦のご両親に頭を下げる。

 「すみません。本当なら俺が由香里に着せてあげたかったんですが、何度その話をしても、必要ないって断られて。ありがとうございます。お言葉に甘えてもよろしいですか?」

 ご両親は微笑んで頷いた。
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