アンコール マリアージュ
 そろそろ新婦のヘアメイクが整いそうなのを見ると、真菜は美佳に目配せする。

 美佳は頷くと、ご両親を、休憩室へどうぞ、お茶でもお持ちしますね、と適当な事を言って連れ出した。

 ご両親はこの後、着替えを済まされ、チャペルに移動する事になっている。
 
 その対応は、美佳に任せていた。

 「さあ、新婦様。ドレスにお着替えを」

 希がカーテンの中に促し、新婦はドキドキした表情で立ち上がった。

 やがてカーテンから出てきた新婦に、その場の皆がため息をつく。

 「由香里、綺麗だ…」
 「うわー、ママすごい!おひめさまだ!」

 男の子はぴょんぴょん跳ねて喜んでいる。

 「ど、どうしよう、こんなドレス。ああ、足が震えそう…」

 真菜はにっこり笑いかけた。

 「とてもお綺麗ですよ。可愛いらしくて美しいプリンセスですね」

 豪華にふわっと広がる、王道のプリンセスライン。

 肩はパフスリーブになっていて、まだ若い新婦にとても良く似合っていた。

 「さあ、ではアクセサリーを選んでいきましょう」

 希が再び新婦をドレッサーの前に座らせると、真菜はインカムを手にした。

 「控え室、真菜です。お着替え完了しました。撮影お願いします」
 「拓真、了解ー。すぐ行きます」

 拓真の返事が聞こえ、しばらくすると、部屋のドアがノックされた。
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